令和3年度税制改正大綱の法人税のおもな今後の変更

2020年12月10日に令和3年度税制改正大綱が公表されました。

令和3年度税制改正大綱のうち法人税のおもな今後の変更について記載します。

中小企業者等の法人税の軽減税率の特例

次の変更が予定されています。

  • 適用期限を2年延長→2023(令和5)年3月31日までに開始する事業年度
対象法人本来の法人税率法人税の軽減税率
大法人(資本金1億円超など)23.2%
中小法人(資本金1億円以下)年800万円超の所得 23.2%
年800万円以下の所得 19%年800万円以下の所得 15%
※適用期限を2年延長

中小企業者投資促進税制の見直し

次の変更が予定されています。

  • 適用期限を2年延長される
  • 対象指定事業に次の事業が追加される
    • 不動産業
    • 物品賃貸業
    • 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)
  • 対象法人に商店街振興組合が追加される
  • 対象資産から、匿名組合契約等の目的である事業の用に供するもが除外される
  • 商業、サービス業、農林水産業活性化税制を中小企業投資促進税制に統合される
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。
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投資促進税制の設備を購入時の30%増の特別償却と7%の税額控除

中小企業経営強化税制の特別償却と税額控除

関連法令の改正を前提に、次の変更が予定されています。

  • 適用期限が2年延長される
  • 計画終了年度に修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画を実施するために必要不可欠な節義が追加される
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。
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地域未来投資促進税制の見直し

次の変更が予定されています。

  • 適用期限を2年間延長する
  • サプライチェーンの維持・強化を目的とする類型を追加する
  • 主務大臣の確認要件のうち、先進性の要件の見直しをする
  • 特別償却と税額控除の引上げに、投資収益率と労働生産性の伸び率が一定水準以上が見込まれることを確認する
  • 承認地域経済牽引事業計画の実施期間内は、他の地域経済牽引事業計画の主務大臣の確認は受けられない
  • 承認地域経済牽引事業計画の実施期間後は、他の地域経済牽引事業計画の主務大臣の確認を受けるときは投資収益率と労働生産の伸び率の実績を確認する
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。
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給与等の引上げ&設備投資を行ったときの税額控除の見直し

次の変更が予定されています。

  • 青色申告書を提出する法人(個人事業者)
  • 令和3年4月1日~令和5年3月31日までの開始する事業年度
  • 国内新規雇用者に給与等を支給すること
  • 新規雇用者給与等支給額の新規雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2%以上
  • 控除対象新規雇用者給与等支給額の15%の税額控除ができる
  • 上記を満たしたときに、教育訓練費の比較教育訓練費に対する増加割合が20%以上のときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の20%の税額控除ができる
  • 控除税額の上限は、法人税額の20%
  • 設立事業年度は対象外
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。
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2017年4月以降の給与の増加と設備投資したときの25%税額控除

所得拡大促進税制の見直し

次の変更が予定されています。

  • 適用期限を2年延長する
  • 次の2つ要件を「雇用者給与等支給額が1.5%以上の増加」の要件にする
    • 雇用者給与等支給額が前年度を上回る
    • 継続雇用者給与等支給額の1.5%以上の増加
  • 税額控除が25%となる要件のうち、①を②へ変更する
    1. 継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2.5%
    2. 雇用者給与等支給額の雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2.5%

電子帳簿等保存制度の見直し

次の変更が予定されています。

  • 事前承認制を廃止する
  • 帳簿が正規の簿記の原則に従っているは、電子データのまま保存することが可能になる
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スキャナ保存制度の見直し

次の変更が予定されています。

  • 事前承認制を廃止する
  • タイムスタンプの付与期間が最長約2か月以内になる(現在は、3日以内)
  • スキャナで保存する国税関係書類への自署がいらなくなる
  • 訂正、削除したときの記録を、タイムスタンプの付与に代えることができる
  • 相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等の適正事務処理要件定が廃止される
  • スキャナ保存された記録に、隠ぺい、仮装された内容があり、期限後申告、修正申告、更正、決定等があったときは、重加算税+申告漏れ等の本税10%となる
    など
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税務関係書類の押印義務

令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類は、次の書類を除き、押印義務がが予定されています。

押印義務が必要なものは、下記のような書類となります。

  • 実印による押印が必要な書類
  • 印鑑証明書の添付を求めれている書類

また、令和3年4月1日前でも押印がなくても改めて押印する必要がなくなる予定です。

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特定事業継続力強化設備等の特別償却の見直し

次の変更が予定されています。

  • 対象設備を見直す
  • 計画の認定期限を設定する

特定中小企業者等が経営強化改善設備を取得したときの特別償却と税額控除

適用期限で廃止されます。

所得税でも同様に廃止されます。

デジタルトランスフォーメーショ(DX)投資促進税制の創設

産業競争力強化法を前提に、デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制が創設される予定です。

デジタル技術を活用した企業変革(DX)を促進するために、新商品開発、新生産方式、販売方式により新需要開拓や生産成功向上を全社で取組企業が提出する「事業適応計画」が産業競争力強化法で創設されるため、その計画により取得するクラウド型システムを対象とする税制措置が創設

  • 青色申告書を提出する法人(個人事業者)のうち、産業競争力強化法の事業計画(仮称)の認定を受けている
  • 産業競争力強化法の改正法の施工日~2023(令和5)年3月31日の期間
  • 事業適応(仮称)のために必要なソフトウェアの新設、増設または機械装置、器具備品。ただし、開発研究資産を除く。
  • 事業適応(仮称)を実施するために必要なソフトウェアの利用費(繰延資産に限定)
  • 国内にある事業用の事業適応設備であること
  • 対象資産の取得価額+対象繰延資産の額の合計額≦300億円
  • 特別償却(取得価額×30%)と税額控除(取得価額×3%(一定の場合は5%)の選択適用
  • 繰延資産(繰延資産の額×30%)と税額控除(繰延資産の額×3%(一定の場合は5%)の選択適用
  • 税額控除は、カーボンニュートラル投資促進税制の税額との合計額≦法人税額×20%(上限)

カーボンニュートラル投資促進税制の創設

産業競争力強化法の改正を前提に、カーボンニュートラル投資促進税制が創設される予定です。

2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出をゼロ)に向けて、産業競争力強化法の規定予定の「中長期環境適応計画」のため導入される次の設備の税制を創設する

  • 青色申告書を提出する法人(個人事業者)
  • 産業競争力強化法の中長期環境適応計画(仮称)の認定を受けている
  • 産業競争力強化法の改正法の施工日~令和6年3月31日までの期間
  • 産業競争力強化法の中長期環境生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備を購入したこと
  • 日本国内の事業に使用する
  • 特別償却(取得価額×50%)と税額控除(取得価額×5%(一定のときは10%)
  • 税額控除額は、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除と合計して法人税額×20%を上限
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。

繰越欠損金の控除上限の特例の創設

産業競争力強化法の改正を前提に、繰越欠損金の控除上限の特例が創設される予定です。

コロナ過の欠損金は、一定期間、DX、カーボンニュートラル、事業再構築・再編の投資の範囲で最大100%まで控除することができる。

  • 青色申告書を提出する法人
  • 産業競争力強化法の改正の施工日~1年経過日までに産業競争力強化法の改正の事業適応計画(仮称)の認定を受けている
  • 事業適応を実施する事業年度に特例対象欠損金額がある
  • 欠損金の繰越控除前の所得金額の範囲内で損金にできる
  • 所得金額の50%超の部分は、累積投資残額までの金額が限度
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株式対価M&Aを促進する措置の創設

  • 自社株式を対価、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aの、対象会社株主の譲渡損益の課税の繰延
  • 自社株式と一緒に金銭等を交付する混合対価を一定程度みとめ、期限を設けない

中小企業経営資源の集約化税制の創設

経営資源の集約化で生産性向上等を目指す計画の認可を受けた中小企業が、中小企業の株式の取得後に簿外資産、偶発債務等が顕在化するリスクに備えるために準備金を積み立てたときは損金算入を認める。

また、M&A後の積極的な投資や雇用を確保するために、次のようになります。

  • 中小企業経営強化税制の適用ができる
  • 所得拡大促進税制の上乗せ要件の計画認定が不要になる

試験研究の税額控除の見直し

次の試験研究の税額控除が見直しされる予定です。

  1. 試験研究費の総額の税額控除
  2. 中小企業技術基盤強化税制
  3. 特別試験研究費の税額控除

試験研究費の総額の税額控除の見直し

次の変更が予定されています。

  • 税額控除率の見直し
    • 下限6%→2%へ引下げ
    • 上限;原則10%→14%へ引上げ
    • 適用期限を2年延長する
    • 増額試験研究費割合>9.4%
      10.145%+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35
    • 増額試験研究費割合≦9.4%
      10.145%+(9.4%-増減試験研究費割合)×0.175
  • コロナ過で売上が一定程度減少した企業のうち、研究開発投資を増加させたときは、控除税額の上限に法人税額の5%を上乗せする
    • 令和3年4月1日~令和5年3月31日までの間に開始する事業年度
    • 基準年度比売上金額減少割合≧2%
    • 試験研究費>基準年度試験研究費
      ※基準年度試験研究費=令和2年2月1日に最後に終了した事業年度の試験研究費
  • 適用期限を2年延長される特例
    • 試験研究費が平均売上金額×10%を超えるときの税額控除率の特例
    • 試験研究費が平均売上金額×10%を超えるときの控除税額の上限の上乗せ特例
  • 自社利用ソフトウェアの取得価額を構成する試験研究費も対象に追加する
  • 個人事業者など(所得税)でも同じ取り扱いになります。

中小企業技術基盤強化税制の見直し

次の変更が予定されています。

  • コロナ過で売上が一定程度減少した企業のうち、研究開発投資を増加させたときは、控除税額の上限に法人税額の5%を上乗せする
    • 令和3年4月1日~令和5年3月31日までの間に開始する事業年度
    • 基準年度比売上金額減少割合≧2%
    • 試験研究費>基準年度試験研究費
      ※基準年度試験研究費=令和2年2月1日に最後に終了した事業年度の試験研究費
  • 増減試験研究費割合>9.4%の特例(旧:8%を超えるときの特例)
    • 適用期限を2年延長する
    • 税額控除率(12%)+(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35
    • 控除税額の上限に当期の法人税×10%を上乗せする
  • 適用期限を2年延長される特例
    • 試験研究費が平均売上金額×10%を超えるときの税額控除率の特例
    • 試験研究費が平均売上金額×10%を超えるときの控除税額の上限の上乗せ特例
    • 税額控除率は17%を上限 ※現行と同じ

特別試験研究費の税額控除の見直し

次の変更が予定されています。

  • 対象となる特別試験研究費に次の費用が追加される
    • 国立研究開発法人の外部化法人との共同研究費
    • 国立研究開発法人の外部化法人への委託研究費
  • 税額控除率25%
  • 特別研究機関等の範囲に、人文系の研究機関を追加する
  • 特別試験研究費の対象となる大学等との共同研究と大学等への委託研究は、契約上の試験研究費の総見込額50万円を超えるものに限定される
  • 特別試験研究費の対象となる特定中小企業者等への委託研究は一定の要件を満たすものに限定される

まとめ

令和3年税制改正大綱の法人税のおもな今後の変更ついて記載しました。

  • 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例
  • 中小企業者投資促進税制の見直し
  • 中小企業経営強化税制の見直し
  • 地域未来投資促進税制の見直し
  • 所得拡大促進税制の見直し
  • 給与等の引上げ&設備投資を行ったときの税額控除の見直し
  • 電子帳簿等保存制度の見直し
  • 税務関係書類の押印義務
  • デジタルトランスフォーメーショ(DX)投資促進税制の創設
  • カーボンニュートラル投資促進税制の創設
  • 繰越欠損金の控除上限の特例の創設
  • 株式対価M&Aを促進する措置の創設
  • 中小企業経営資源の集約化税制の創設
  • 試験研究の税額控除の見直し

上記以外の法人税にも今後変更するものがありますが、

さらに詳しく知りたい方は「令和3年度税制改正大綱(外部サイトへ移動します)」をご覧ください。

令和3年度税制改正大綱の所得税のおもな今後の変更

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