法人が赤字でも2つのメリット繰越控除と繰戻し還付

法人が赤字でも2つある税金のメリット繰越控除と繰戻し還付
この記事を読んでわかること

法人が赤字でも2つある税金の メリット 繰越控除と繰り戻し還付ついてざっくり理解できる

2020年12月15日追記 令和3年度税制改正大綱

目次

法人が赤字(欠損)になったとき

法人が赤字となったときに、一定の条件にあてはまるときは、赤字(欠損金額)を次のようにすることができる。

  1. 赤字を翌期以降に繰り越し、翌期以降の黒字から繰越した赤字を差し引く
  2. 前期の黒字と赤字を相殺し、前期に納付した法人税の還付請求をする

法人の赤字(欠損金額)を翌期以降に繰り越すとき

赤字(欠損金額)を翌期以降に繰り越し、翌期以降の黒字から繰越した赤字を差し引くためには、法人が次に当てはまる必要がある

  1. 赤字の事業年度に青色申告書の確定申告書を提出する
  2. 翌期以降も連続して確定申告書を提出する(青色でなくてもOK)

ただし、赤字の法人が全部にあてはまるときは、赤字を繰越すことができない

  • 平成18年4月1日以後、他の者から発行済株式等の50%超を直接または間接的に保有されている
  • 発行済株式等の50%超を保有されてから5年以内に、50%超保有前に行っていた事業の全部を廃止した
  • 50%超保有前に行っていた事業の事業規模のおおむね5倍を超える借入等を行うことなど一定の事由にあてはまるとき

赤字(繰越欠損金)の繰越期間

法人の赤字の繰越期間は、赤字となった事業年度の開始日により、次のようになる

事業年度の開始日繰越期間
平成30年4月1日以後10年
平成20年4月1日~平成30年3月31日9年

黒字から控除できる赤字の金額

翌期以降の黒字(所得)から控除できる赤字の金額は、次の区分により控除できる赤字の金額が変わる

  • 黒字(所得)の全額まで控除できる法人
    • 中小法人等
    • 新設法人で設立日から7年間の期間
      ※次のときは除外される
      • 資本金5億円以上の法人に直接または間接に100%出資されている
      • 相互会社(≒保険会社)に100%出資されている
      • 株式移転完全親法人は除外される
    • 更生手続開始決定があった法人で、一定の期間
    • 再生手続開始決定があった法人で、一定の期間
      など
  • 上記以外の法人
    黒字(所得)から控除できる赤字(欠損金額)は、つぎのようになる
事業年度の開始日控除できる赤字(欠損金額)の上限
平成30年4月1日~黒字(所得)×50%
平成29年4月1日~平成30年3月31日黒字(所得)×55%
平成28年4月1日~平成29年3月31日黒字(所得)×60%
平成27年4月1日~平成28年3月31日黒字(所得)×65%
平成24年4月1日~平成27年3月31日黒字(所得)×80%

中小法人等

黒字(所得)の全額まで控除できる中小法人等とは、つぎに当てはまる法人のことをいいます。

  • 資本金、出資金が1億円以下の普通法人
  • 資本または出資を有しないもの
  • 公益法人等
  • 協同組合等
  • 人格のない社団等

ただし、資本金が1億円以下の普通法人でも、次にあてはまるときは中小法人等から除外される

  • 単体の資本金5億円以上の大法人に直接または間接的に100%出資されている
  • 100%支配関係がある複数の資本金5億円以上の大法人に直接または間接的に100%出資されている
  • 相互会社(≒保険会社)に直接または間接的に100%出資されている
  • 100%支配関係がある複数の相互会社に直接または間接的に100%出資されている
  • 投資法人、特定目的会社、受託法人
  • 資本、出資を有しない法人に直接または間接に100%出資されている
  • 大通算法人

大通算法人

大通算法人とは、通算法人である普通法人または普通法人の各事業年度終了の日に普通法人との間に、通算完全支配関係がある他の通算法人のうち、各事業年度終了のときに次のどれかに該当する普通法人

  • 資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人
  • 単体の大法人(資本金等が5億円以上の法人など)に完全支配されている法人
  • 100%グループ内の複数の大法人(資本金等が5億円以上の法人など)に完全支配されている法人
  • 保険業法に規定する相互会社(≒保険会社)
  • 法人課税信託の受託法人

前期の黒字と赤字を相殺し、前期に納付した法人税の還付請求

赤字(欠損金額)を前期の黒字と相殺し、前期の法人税の還付を申請するためには、その法人が次のどれかに当てはまる必要がある

  • 青色申告書を提出している法人
  • 解散等の事実が生じたことにより欠損金額がある法人
  • 災害による災害損失欠損金がある法人

青色申告書を提出している法人

赤字(欠損金額)を前期の黒字と相殺し、前期の法人税の還付を申請する青色申告書を提出している法人とはつぎの要件を全部にあてはまる必要があります。

  1. 還付の対象となる黒字事業年度から赤字事業年度まで連続して青色申告書で申告している
  2. 赤字事業年度の申告書を提出期限までに提出している
  3. 平成4年4月1日~2024年(令和6年)3月31日までに終了する事業年度では、中小企業者等にあてはまる
  4. 赤字(欠損)の申告書と同時に欠損金の繰り戻しによる還付請求書を提出する
  5. 還付の対象となる黒字の事業年度は、赤字の事業年度開始日の1年前以内に開始事業年度

中小企業者等

黒字(所得)の全額まで控除できる中小法人等とは、つぎにあてはまる法人

  • 資本金、出資金が1億円以下の普通法人
  • 資本または出資を有しないもの
  • 公益法人等
  • 協同組合等
  • 法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる法人
    認可地縁団体、管理組合法人、団地管理組合法人、法人である政党等、防災街区整備事業組合、特定非営利活動法人、マンション建替組合、マンション敷地売却組合および敷地分割組合
  • 人格のない社団等

ただし、資本金が1億円以下の普通法人または資本または出資を有しないもので、各事業年度終了のときに次にあてはまるときは中小企業者等から除外される

  • 単体の大法人(資本金等が5億円以上の法人など)に完全支配されている法人
  • 100%支配関係がある複数の資本金5億円以上の大法人に直接または間接的に100%出資されている
  • 保険業法に規定する相互会社(≒保険会社)および外国相互会社
  • 投資法人、特定目的会社
  • 法人課税信託の受託法人
  • 大通算法人

解散等の事実があったことにより赤字(欠損金額)がある法人

解散、事業の全部譲渡、会社更生法等による更生手続きなどの事実が生じた赤字(欠損金額)がある法人が、つぎの要件にあてはまるときは、前期の黒字と相殺し、還付の請求をすることができる

  • 次のどちらかの事業年度の赤字(欠損金額)がある
    • 解散等の事実が生じた日前1年以内に終了した事業年度
    • 解散等の事実が生じた日の事業年度
  • 解散等の事実が生じた日から1年以内に還付請求書を提出している
  • 還付の対象となる黒字の事業年度から赤字の事業年度まで連続して青色申告書で申告している
  • 適格合併による解散ではない

災害による災害損失欠損金がある法人

災害による赤字(災害損失欠損金)がある法人が、つぎの要件にあてはまるときは、前期の黒字と相殺し還付の請求をすることができる

  • 次のどちらかの事業年度の赤字(欠損金額)がある
    • 災害のあった日から1年を経過日までに終了する事業年度
    • 災害のあった日から6か月を経過日までに終了する中間期間
  • 次のどちらかを提出し、同時に還付請求書を提出している
    • 赤字(欠損)の申告書を提出している
    • 仮決算の中間申告書を提出している
  • 還付の対象となる黒字の事業年度から赤字の事業年度まで連続して青色申告書で申告している

対象となる災害

災害損失欠損の対象となる災害は、次のようなものが該当する

  • 震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火などの自然災害
  • 鉱害、火薬の爆発などの人為による異常な災害
  • 害虫、害獣などの生物による異常な災害

令和3年度税制改正大綱

令和3年度税制改正大綱により、産業競争力強化法の改正を前提に、繰越欠損金の控除上限の特例が創設予定

コロナ過の欠損金は、一定期間、DX、カーボンニュートラル、事業再構築・再編の投資の範囲で最大100%まで控除することができる。

  • 青色申告書を提出する法人
  • 産業競争力強化法の改正の施工日~1年経過日までに産業競争力強化法の改正の事業適応計画(仮称)の認定を受ける
  • 事業適応を実施する事業年度に特例対象欠損金額がある
  • 欠損金の繰越控除前の所得金額の範囲内で損金にできる
  • 所得金額の50%超の部分は、累積投資残額までの金額が限度

上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。

具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。

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