法人が消費税の免税事業者になるのか、課税事業者なるのか判定順序を追いながらざっくり理解できる。
法人の消費税の納付が免除される判定順序
法人の消費税の納税義務には判定基準があり、すべての判定基準により消費税の課税事業者に該当しないときは、消費税の納税義務が免除されることになります。
判定基準は①→②→③→④→⑤→⑥→⑦→⑧の順番に判定していくことになります。
※平成25年1月1日以後に開始した事業年度が対象
※平成26年4月1日以後に設立した法人が対象
判定1「基準期間の課税売上高」
法人の事業年度の「基準期間の課税売上高>1,000万円」のときは、消費税を納付義務者(課税事業者)となります。
「基準期間の売上高」とは、次のとおりになります。
- 基準期間の月数が12か月のとき
基準期間中の課税売上高 - 基準期間の月数が12か月以外のとき
基準期間中の課税売上高÷基準期間の月数の合計×12
基準期間の課税売上高が1000万円未満のときや、法人の設立事業年度と2期目の事業年度には前々事業年度がないため、次のステップ2以降により消費税の納税義務者(課税事業者)を判定します。
基準期間とは?
- 前々事業年度の月数が12か月のとき
基準期間=前々事業年度(12か月) - 前々事業年度の月数が12か月未満のとき
基準期間=その事業年度開始の2年前の日の前日から1年を経過する日の間に開始した各事業年度
課税売上高とは?
消費税の納税義務の判定をするときの「課税売上高」とは、次の金額の合計額になります。
- 8%や10%などの消費税が課税される売上
- 日本から外国に輸出した輸出売上
判定2「消費税の課税事業者を選択」
法人のうち消費税の免除の判定基準のステップ1により消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときは、次の日までに税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出したときは、消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
- 設立事業年度のとき
設立事業年度の末日まで - 設立事業年度以外のとき
その事業年度開始日の前日まで
課税事業者選択届出書を提出したときの注意点
課税事業者選択届出書を提出したときは、事業を廃止する以外は、次の期間内に課税事業者の選択をやめることができません。
- 原則 課税事業者となった日から2年間
- 例外
- 課税事業者となった1期目の間に調整対象固定資産を購入したとき
課税事業者となった日から3年間 - 課税事業者となった2期目の間に調整対象固定資産を購入したとき
課税事業者となった日から4年間
①または②のときは、調整対象固定資産を購入した期と翌期は簡易課税選択届出書を提出することはできません
また、課税事業者の選択をやめるときは「課税事業者選択不適用届出書」を課税事業者の選択をやめようとする課税期間の初日の前日までに税務署に提出する必要があります。
調整対象固定資産とは?
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、税抜き100万円以上の次の資産になります。
- 建物、構築物
- 機械及び装置
- 船舶、航空機、車両及び運搬具
- 工具、器具及び備品
- 鉱業権その他の資産
判定3「特定期間の課税売上高(給与等)」
法人が判定基準ステップ1と2により消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときは、特定期間内(原則、前事業年度の開始日~6か月の期間)の「課税売上高」または「給与等支払額」のうち「法人がどちらか選択した」合計額が1,000万円を超えたときは、その事業年度は消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
ただし、「前事業年度が決算期の変更をしないで7カ月以下」だったときは、この特定課税期間の判定をする必要はありません。
判定4「合併があったとき」
法人が判定基準1~3で消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときに、吸収合併や新設合併があり、一定の条件に該当するときは、その事業年度は消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
判定5「分割があったとき」
法人が判定基準1~4で消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときに、分割があり、一定の条件に該当したときは、その事業年度の消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
判定6「基準期間がない法人」
法人が判定基準1~5で消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときに、次に両方に該当したときは、その事業年度の消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
- その事業年度の基準期間がない
※法人の設立事業年度や2期目の事業年度 - その事業年度の開始日の資本金額(または出資金額)が1,000万円以上
判定7「特定新規設立法人」
法人が判定基準1~6で消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときに、平成26年4月1日以後に設立した法人のうち、次のすべてに該当するときは、その事業年度の消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
- その事業年度の基準期間がない
※法人の設立事業年度や2期目の事業年度 - その事業年度開始日の資本金の額(または出資の金額)が1,000万円未満
- その基準期間がない事業年度開始の日に、他の者から法人の株式等の50%超を直接または間接に保有されている(=特定要件)
- ③の特定要件の判定の対象となった他の者および他の者が100%支配する法人(=特殊関係法人)のうち、他の者と特殊関係法人のうち、どちらかの新規設立法人の事業年度の基準期間に相当する期間(=基準期間相当期間)の課税売上高が5億円を超えている
他の者とは?
他の者とは、新規設立法人の直接株主である個人や法人のことをいいます。
また、他の者が個人であるときは、その個人の六親等の親族や内縁関係者などの特殊関係者も「他の者」に含めて5億円超の判定をします。
しかし、別生計の他の者が100%支配する法人は5億円超の判定から除外されます。
判定8「高額特定資産の仕入れ等」
法人が判定基準1~7で消費税の納税義務者(課税事業者)にならなかったときに、平成28年4月1日以後に、次に該当したときは、その事業年度の消費税の納税義務者(課税事業者)になります。
また、簡易課税の適用を受けることもできません。
- 高額特定資産を購入したときに、原則の課税事業者であったとき(免税事業者や簡易課税の適用を受けていない課税期間)
- 高額特定資産の購入した課税期間の初日以後3年を経過する日の課税期間までの各期間
高額特定資産とは?
高額特定資産とは、次のどちらかの資産で、一の取引単位で、税抜きで1,000万円以上するものをいいます。
- 棚卸資産
- 調整対象固定資産
まとめ
今回は、法人の消費税の免除の判定順序についてざっくり解説しました。
- 基準期間(前々事業年度)の課税売上高の判定
- 消費税の課税事業者を選択したとき
- 特定期間の課税売上高(給与等)の判定
※平成25年1月1日以後に開始した事業年度が対象 - 合併があったときの法人の判定
- 分割があったときの法人の判定
- 基準期間(前々事業年度)がない法人の判定
- 特定新規設立法人の判定
※平成26年4月1日以後に設立した法人が対象 - 高額特定資産の仕入れ等の判定
上記のすべてのステップで納税義務がないと判定されてときに、消費税の納税義務が免除される免税事業者となります。
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