相続人が障害者のときに相続税から控除される障害者控除についてざっくり説明します。
相続があったときの障害者控除
相続または遺贈により財産を取得した者のうちに一定の要件に該当する障害者がいるときは、
その人の相続税額から一定額を控除することができます。
対象となる人
下記の①~④のすべてを満たす方が対象となります。
- 障害者であること。
- 85歳未満の者であること。
- 亡くなった人の法定相続人であること。
※相続の放棄があったときには、その放棄がなかったものとしたときに法定相続人であること。あわせて読みたい相続のときの配偶者、子、養子、両親、兄弟、姉妹などの法定相続分 相続のときの配偶者、子、養子、両親、兄弟、姉妹などの法定相続分についてざっくり記載します。 【相続人の法定相続分】 亡くなった人の相続人の法定相続分とは、亡く... - 相続または遺贈で財産を取得したに日本国内に住所がある人。
※平成29年4月1日以後に相続開始(亡くなられた)ときは、日本国内に住所がある人が一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人または非居住被相続人であるときは対象となりません。あわせて読みたい2017年以降の相続税と贈与税の納税義務者の改正|8項目 2017以降の相続税および贈与税の納税者の改正についてざっくり説明します。 2020年12月14日 令和3年度税制改正大綱について追記 【相続税および贈与税の納税者の改正】 ...
障害者控除の対象者の図解
※「黄色」に該当する人が未成年者控除の対象となります。
※「経過措置あり」と記載がある箇所は、非居住外国人となります。
一時居住者の要件
一時居住者とは、相続開始時に出入国管理および難民認定法別表第一上欄の在留資格を有する人で、その相続開始時前15年以内のうち日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以内である方をいいます。
一時居住被相続人
下記の要件をすべて満たす亡くなった人のことをいいます。
- 相続開始時に出入国管理および難民認定法別表第一上欄の在留資格を有していたこと
- 相続開始時に日本国内に住所があったこと
- 相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下であること
非居住相続人①
下記の要件をすべて満たす被相続人のことをいいます。
- 相続開始時に日本国内に住所がなかったこと
- 相続開始前10年以内に日本国内に住所がある人のうち、
相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下であること - 相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下
(その期間引き続き日本国籍を有していなかった人に限る。)
非居住相続人②
相続開始前10年以内に日本国内に住所を有したことがなかった亡くなった人で、国籍は関係ありません。
非居住外国人
下記の①と②を満たすときは、経過措置として平成29年4月1日~2024(令和4)年3月31日までの間は、亡くなった人が平成29年4月1日から相続開始時まで引き続き国内に住所を有さず、日本国籍がない方(=非居住外国人)
- 亡くなった人の要件
- 相続開始時に国内に住所がないこと
- 相続開始前10年以内に国内に住所があること
- 非居住相続人に該当しないこと
- 相続する人の要件
- 相続開始時に日本国内に住所がないこと
- 相続開始時に日本国籍ではないこと
障害者控除額の計算
- 一般障害者の場合
障害者控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×10万円たとえば
相続開始時の年齢が30歳3カ月だったとき85歳-30歳3カ月=54年9カ月→55年 ※1年未満は切上
55年×10万円=550万円 - 特別障害者の場合
障害者控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×20万円たとえば
相続開始時の年齢が30歳3カ月だったとき85歳-30歳3カ月=54年9カ月→55年 ※1年未満は切上
55年×20万円=1,100万円
一般障害者
一般障害者とは、次のどれかに該当する方になります。
- 身体障害者手帳に3級~6級と記載されている方。
- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により
知的障害者とされた方のうち、重度の知的障害者とされた方以外の方。 - 精神障害者保健福祉手帳に二級または三級と記載されている方。
- 常に就床を要し、複雑な介護を要する方のうち、精神または身体の障害の程度が①または②に掲げる方に
準ずるとして市町村長などの認定を受けている方。 - 精神または身体に障害がある65歳以上の方で、精神または身体の障害の程度が①または②に掲げる方に
準ずるとして市町村長などの認定を受けている方。 - 戦傷病者手帳に記載されている精神上または身体上の障害の程度が次の項目に該当する方
- 恩給法別表第一号表の二の第四項症から第六項症までの障害があるもの
- 恩給法別表第一号表の三に定める障害があるもの
- 傷病について厚生労働大臣が療養の必要があると認定したもの
- 旧恩給法施行令第31条第1項に定める定める程度の障害があるもの
特別障害者
特別障害者とは、次のどれかに該当する方になります。
- 身体障害者手帳に1級または2級と記載されている方。
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方、または、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた方。
- 精神障害者保健福祉手帳に一級と記載されている方。
- 常に就床を要し、複雑な介護を要する方のうち、精神または身体の障害の程度が①または②に掲げる方に準ずるとして市町村長などの認定を受けている方。
- 精神または身体に障害がある65歳以上の方で、精神または身体の障害の程度が①または②に掲げる方に準ずるとして市町村長などの認定を受けている方。
- 戦傷病者手帳に記載されている精神上または身体上の障害の程度が恩給法別表第一号表の二の特別項症から第三項症までであると記載からされた方。
- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている方。
障害者として取り扱うことができる人
相続開始時(亡くなったとき)に身体障害者手帳などの交付を受けていない方でも、
次のすべてに該当するときは一般障害者または特別障害とされます。
- 相続税の期限内申告書を提出するときに、手帳の交付を受けている、または、手帳の交付を申請中である。
- 交付を受けている手帳、手帳の交付を受けるための医師の診断書、精神障害を支給事由とする給付を現に受けていることを証する書類により、相続開始時に明らかに手帳に記載されている程度の障害があると認められている方。
障害者の扶養義務者から控除できる障害者控除
障害者の方の相続税額より障害者控除額が多いときに、その障害者の方の扶養義務者で
同一の亡くなった人から相続または遺贈により財産を取得したときは、その扶養義務者の相続税額から障害者控除額を控除することができます。
たとえば、
障害者 相続税200万円、障害者控除額550万円
200万円-550万円=-350万円(控除不足額)
扶養義務者(配偶者、直系血族、兄弟姉妹並びに3親等内の親族のうち一定者)
相続税額 500万円
500万円-350万円(控除不足額)=150万円
過去に障害者控除を受けていたとき
障害者の方が過去に障害者控除を受けていたときの2回目以降の障害者控除は、
それまでに相続税額から控除した障害者控除の残額の範囲内しか控除することはできません。
1回目の相続開始時 30歳 相続税額200万円
(85歳-30歳)×10万円=550万円-200万円=350万円(控除不足額)
2回目の相続開始時 30歳
(85歳-40歳)×10万円=450万円>350万円 ∴350万円(少ない金額)
その他の相続税の税額控除
障害者控除以外の相続税の税額控除は、おもに次のようなものがあります。
- 暦年贈与の贈与税額控除
- 配偶者の税額軽減
- 未成年者控除
- 障害者控除:現在のページ
- 相次相続控除
- 外国税額控除
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