医療費を一定額支払ったときの所得税の医療費控除

医療費を多額に支払っているときの所得税の医療費控除についてざっくり記載します。

所得税の医療費控除

その年に本人または一定の親族が医療費を支払ったときに、その支払った医療費が一定額を超えるときは、確定申告をすることにより一定の金額を所得控除することができます。

2017(平成29)年分からは、セルフメディケーション税制とどちらかを選択することができるようになりました。

所得控除とは?

所得控除とは、所得税を計算するときに利益から控除できる経費みたいなものです。

所得控除の種類によって、控除できる金額が違います。

また、所得控除の金額がそのまま税金が減るのではなく、【所得控除×税率】だけ税金が減るため収入金額や収入の種類によっていくら税金が減るかが変わります。

医療費控除の所得控除の金額

医療費控除の所得控除の金額は、次のようになります。

  1. その年に支払った医療費
  2. 次の保険金などの金額
    • 入院費給付金
    • 高額療養費
    • 家族療養費
    • 出産育児一時金
      など
  3. 次のうち、どちらか小さい金額
    • 10万円
    • 総所得金額等の合計額×5%
      ※「収入が給与のみ」のときの総所得金額額とは、次のどちらかで確認することができます。
      • 【源泉徴収票】の「給与所得控除後の金額」
      • 【確定申告書】の「所得金額の合計」
  4. ①-②-③=医療費控除の所得控除の金額※上限200万円

たとえば、

  1. その年に支払った医療費が、100万円
  2. 次の保険金などの金額が、20万円
  3. 次のうち、どちらか小さい金額
    • 10万円
    • 400万円(総所得金額等の合計額)×5%=20万円
    • 10万円<20万円 ∴10万円
  4. ①-②-③=70万円(医療費控除)

また、

  1. その年に支払った医療費
    • 入院費 20万円
    • 歯科、風邪薬など 30万円
  2. 次の保険金などの金額が
    • 入院費給付金 30万円
  3. 次のうち、どちらか小さい金額
    • 10万円
    • 400万円(総所得金額等の合計額)×5%=20万円
    • 10万円<20万円 ∴10万円
  4. 医療費控除の計算
    • 入院費 20万円-25万円=-5万円 → 0円
      保険金の支払対象以外の治療費などには充当されない。
    • 歯科、風邪薬など 30万円
    • 30万円-10万円=20万円(医療費控除)

医療費控除の対象となる医療費

医療費控除の対象となる医療費は、次に掲げる対価のうち、その病状に応じ一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額となります。 

  • 医師、歯科医師の診療または治療
  • 治療または療養に必要な医薬品の購入
  • あん摩、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師などの法律に規定する施術師、柔道整復師による施術
  • 病院・診療所・助産所への通院費、医師等の送迎費で通常必要なもの
  • 保健師、看護師、准看護師による療養上の世話
  • 助産師による分娩の介助
  • 介護福祉士などの喀痰(かくたん)吸引および経管栄養
  • 介護保険制度で提供された一定の施設、居宅サービスの自己負担額
  • 入院時の部屋代、食事代、コルセットなどの医療器具等の購入費、その賃貸料で通常必要なもの
  • 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると
    認められるときのおむつ代(医師が発行した「おむつ使用証明書」などが必要です。)
  • 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
  • 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
  • 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち
    一定の基準に該当する者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用されます。)

    など

医療費控除の対象とならない医療費

次に掲げるものは、医療費の対象にはなりません。

  • 医師などに支払う謝礼金
  • 健康増進、疾病予防などのビタミン剤などの購入費
  • 重大な疾病が発見されなかった健康診断の費用
  • 自己都合で希望する特別室の差額ベット代
  • 通常の眼鏡の購入費、老齢者の使用する補聴器の購入費
  • 通院のための自家用車のガソリン代、駐車料金、分娩のための実家の帰省するための交通費
  • 親族に支払う看護料 
  • 美容整形費用、歯科矯正費用
    など

医療費控除の対象となる生計を一にする配偶者その他の親族の判定時期

生計を一にする配偶者その他の親族に該当するかは、医師などにより診療等を受けたとき、医薬品を購入したとき、医療費を支払ったときに判定されます。

「生計を一(いつ)にする」とは?

日常生活の資(お金、お財布と表現する方もいます。)を共にすることです。

親族が同一の家で生活しているときは、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められるものを除き、生計を一にしていることになります。

また、勤務、修学、療養等の都合上、別居しているときでも下記のどちらかに該当するときは、生計を一にしていることになります。

  • 生活費、学資金、療養費などを常に送金している。
  • 別居しているしている人が、勤務や修学等の余暇には生活を共にしている。

未払いの医療費は、医療費控除の対象になるのか?

未払いの医療費は、その年の医療費控除の対象とはなりません。

ただし、ローンまたはクレジットで支払ったときは、その契約が成立した年の医療費控除となります。

平成29年以後|確定申告で医療費控除の適用を受けるには

平成29年分以後に医療費控除の適用を受けるには、次のどれかの方法により確定申告をする必要があります。

  1. 医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付する。
    ※医療費の領収書は、確定申告期限等から5年間保存する必要があります。
  2. 医療保険者から交付を受けた次の事項が記載されている医療通知を確定申告書に添付する。
    ※医療通知書に記載されている医療費の領収書の保存は不要となります。
    • 被保険者等の氏名
    • 療養を受けた年月
    • 療養を受けた人
    • 療養を受けた病院等の名称
    • 被保険者等が支払った医療費の金額
    • 保険者等の名称
  3. (平成29年分~平成31年分まで)医療費の領収書を確定申告書に添付する。

平成28年以前|確定申告で医療費控除の適用を受けるには

平成28年以前に医療費控除の適用を受けるときは、医療費の領収書を確定申告書に添付する必要があります。

医療費控除と年末調整

年末調整で医療費控除を受けることはできません。

その他の所得控除

医療費控除以外の所得控除は、次のようなものがあります。

上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。
具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。

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