個人事業者が青色申告を申請するときに知っておきたことについてざっくり書きます。
目次
個人事業者の青色申告
一定の帳簿を備付け、日々の取引を正確に記録し、その帳簿に基づいて正確な計算をする個人事業者は、青色申告の承認申請をして、その承認を受けたときは、様々なメリットを受けられます。
個人事業者の青色申告の対象となる事業
青色申告の対象は事業は次のとおりです。
- 不動産所得(不動産等の賃貸)
- 事業所得
- 山林所得
個人事業者の青色申告の要件
次の要件を満たす必要があります。
- 青色申告の申請をして承認を受けていること
- 一定の帳簿を備付け、記録、保存していること
個人事業者の青色申告承認申請の提出期限
初めて青色申告の申請をする人は、次の期限までに青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。
- 原則
青色申告の承認を受けたい年の3月15日まで - 1月16日以降に新規開業したとき
業務開始から2か月以内 - 相続により事業を引き継いだとき
次のうち該当する期限まで- 亡くなった人(先代)が白色申告で、1月16日以後に事業を引き継いだとき
事業を引き継いだ日から2か月以内 - 亡くなった人(先代)が青色申告のときは、次のどれかが期限になります。
- 亡くなった日が1月1日~8月31日
亡くなった日から4か月以内 - 亡くなった日が9月1日~10月31日
その年の12月31日 - 亡くなった日が11月1日~12月31日
翌年2月15日
- 亡くなった日が1月1日~8月31日
- 亡くなった人(先代)が白色申告で、1月16日以後に事業を引き継いだとき
個人事業者の青色申告承認申請書の承認
- 青色申告承認申請書を提出し、その承認の対象となったその年の12月31日までに承認、または、却下の通知がなかったときは、その12月31日に承認があったものとみなされます。
- 11月1日以後に新規事業を開始したときは、翌年2月15日までに承認、または、却下の通知がなかったときは、その2月15日に承認があったものとみなされます。
個人事業者の青色申告のメリット
青色申告のおもなメリットは、次のとおりです。
- 青色申告特別控除
所得金額から上限65万円または10万円まで控除することができる。
上限65万円の特別控除を受けるには次の要件を全て満たす必要があります。- 事業所得または事業的規模の不動産所得がある
- 複式簿記(正規の簿記の原則)によって帳簿を作成している
- 貸借対照表、損益計算書、その他の明細書を確定申告書に添付している
- 確定申告書を提出期限までに提出している
など
- 青色事業専従者給与
生計を一にしている15歳以上の親族のうち事業に専従している人の給与は、事前提出した届出の範囲内で適正な金額を給与として必要経費にすることができます。 - 中小事業者の小額減価償却資産の必要経費算入の特例
30万円未満の減価償却資産の取得価額の全額を必要経費にできる。
その年の合計300万円が上限 - 特別償却を必要経費にできる
- 所得税額の税額控除ができる
- 赤字(純損失)の繰越し
その年の赤字(純損失)を翌年以後3年間に繰り越して、翌年以後の黒字から控除することができます。 - 赤字(純損失)の繰戻し
その年の赤字(純損失)を前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けることができます。
※前年も青色申告であることが前提 - 引当金
貸倒引当金、退職給与引当金等の一定の引当額を必要経費にできる。 - 更正の制限
帳簿調査に基づかない推計課税による更正を受けない - 更正の理由附記
更正通知書にその更正の理由を附記される - 個人事業者が事業承継をするときの事業用資産の贈与税の猶予と免除
- 個人事業者が事業承継をするときの事業用資産の相続税の猶予と免除
- 現金主義
不動産所得と事業所得の前々分の合計所得金額が300万円以下のときは現金主義により計算できるなど
個人事業者の青色申告するための一定の帳簿書類
- 帳簿
総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など - 書類
棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など
個人事業者の青色申告するための帳簿書類の保存期間
帳簿書類の保存期間は、次のとおりです。
- 確定申告書の提出期限の翌日から7年間
帳簿、棚卸表、貸借対照表、損益計算書現金、預金取引等関係書類など - 確定申告書の提出期限の翌日から5年間
上記以外の書類
個人事業者が青色申告書に添付する書類
- 原則
貸借対照表、損益計算書、その他不動産所得、所得税青色申告決算書を添付する必要があります。 - 簡易帳簿で記帳する場合
損益計算書、その他不動産所得、所得税青色申告決算書を添付する必要があります。
個人事業者の青色申告と白色申告との比較
青色申告と白色申告のおもな違いは次のとおりです。
項目 | 青色 | 白色 |
青色申告特別控除 | 上限65万円または10万円 | ☓ |
専従者の給与 | 原則、全額必要経費 | 配偶者 上限86万円 配偶者以外 上限50万円 |
30万円未満の減価償却資産の 全額必要経費 | ○ | ☓ |
特別償却 | ○ | ☓ |
税額控除 | ○ | ☓ |
赤字(純損失)の繰越し | ○ | 変動所得 または 被災事業用資産の損失のみ |
赤字(純損失)の繰戻し | ○ | ☓ |
引当金 | 貸倒引当金 退職給与引当金 など | 貸倒引当金のみ |
更正の制限 | 推計課税されない | 推計による更正・決定される場合がある |
更正の理由附記 | ○ | 不利益処分に対して理由附記される |
個人事業者の青色申告承認申請書の却下
次のどれかに該当する事実があるときは、税務署は申請を却下することができます。
- 簿書類の備付け、記録、保存が帳簿書類の要件を満たしていなかったとき
- 帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいしまたは仮装して記載されている、
その他の事実ではない記載があると認められる相当の理由があるとき - 青色申告の承認の取り消しの通知を受けた日以後1年以内に申請書を提出したとき
- 青色申告の取りやめの届出を提出した日以後1年以内に申請書を提出したとき
個人事業者の青色申告承認申請書の取消し
青色申告の承認があったときでも、次のどれかに該当する事実があるときは、税務署は、その事実が該当する年までさかのぼって、青色申告の承認を取り消すことができる。
- その事業年度の帳簿書類の備付け、記録、保存が法令で定めるところに従って行われていないとき
- 税務調査に当たり帳簿書類の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず調査対象者が正当な理由なくその提示を拒否したとき
- その事業年度の帳簿書類について税務署長の必要な指示に従わなかったとき
- その事業年度の帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいしまたは仮装して記載し、その他の記載事項の全体に真実性を疑うに足りる相当の理由があるとき
など
令和2年税制改正大綱
2019年12月の税制改正大綱では、「青色申告以外の源泉徴収の推計課税」が次のようになる予定です。
税制改正大綱は、通常、3月の国会で承認され、4月以降に施行される予定です。
- 2021(令和3)年1月1日以降に支払いから適用される
- 青色申告書と提出していない個人事業者と法人が、源泉徴収した所得税を納付しなかったときは、税務署が給与等の支払金額、支払日などを推計(見積もる)して徴収することができる
- 給与等、退職手当等、報酬・料金、非居住者が支払いを受けるものが対象となる
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