個人事業主が後継者に事業用資産を相続したときに
相続税が猶予と免除がされるものについてざっくり記載します。
2020年12月14日 令和3年度税制改正大綱について追記
個人事業主が事業承継するときに相続税が猶予と免除される
2019年1月1日~2028年12月31日の間に、個人事業者が後継者に事業用資産を相続または遺贈され、一定の条件を満たすときは、その事業用資産にかかる相続税が猶予され、さらに条件を満たすときは免除されることになります。
個人事業版事業承継の対象となる先代事業者等
事業用資産の相続税が猶予または免除されるときの対象となる先代事業者等は、
次の条件に該当する人となります。
- 亡くなった人が先代事業者のとき
その亡くなった年、その前年と前々年の所得税の確定申告書を青色申告書で提出していること - 亡くなった人が先代事業者以外のとき
- 先代事業者の相続開始または贈与の直前に、先代事業者と生計を一にする親族であること
- 先代事業者から贈与されたあと1年以内に亡くなった人であること
- 先代事業者の相続後1年以内に亡くなった人であること
- 相続した年の前年に、先代事業者の事業が次のどれかに該当しないこと
- 総収入金がゼロ
- 資産保有型事業
- 資産運用型事業
- 性風俗関連特殊営業

個人事業版事業承継の対象となる後継者
事業用資産の贈与税が猶予または免除されるときの対象となる後継者は、次の条件に該当する人となります。
- 2024年3月31日までに個人事業承継計画を提出していること
- 経営革新等支援機関に個人事業承継計画の確認を受けた後継者であること
- 相続開始後5か月目以降8か月以内に都道府県知事の円滑化法の認定申請をし認定を受けること
- 先代事業者が亡くなる直前に、次のどれかの事業で働いていること
※先代事業者が60歳未満で亡くなったときを除く。- 先代事業者の事業
- 先代事業者の事業と同種の事業
- 先代事業者の事業と類似する事業
- 事業承継した事業が次に該当しないこと
- 資産保有型事業
※現金、預金、有価証券等、自分で使用していない不動産、
ゴルフ会員権等、絵画等のが事業用資産の70%以上となる事業 - 資産運用型事業
※運用収入が、総収入金額の75%以上となる事業 - 性風俗関連特殊営業
- 資産保有型事業
- 先代事業者から相続等により取得した土地が
特定事業用宅地等(小規模宅地等の特例)の適用を受けていないこと - 先代事業者の一定の事業用資産の全部を取得すること
※一部が共有の場合は、その共有持分の全部 - 事業用資産を贈与により取得していること
- 引き継いだ事業の取引を記録し、帳簿書類を備え付けること
- 一定の基準日に、引き継いだ事業が性風俗関連特殊営業に該当しないこと
- 事業承継後、一定の期限までに開業届出書を提出し、
青色申告の承認を受けるまたは受ける見込みであること - 相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出すること
- 相続税の申告期限までに猶予される相続税と利子税に見合う担保を税務署に提供すること
- 3年ごとに継続届出書を税務署へ提出していること
個人事業版事業承継の対象とならない事業
事業用資産の相続税が猶予または免除されるときの対象とならない事業は、次のとおりです。
- 不動産貸付業
- 駐車場業
- 自転車駐輪場業
- 資産保有型事業
※現金、預金、有価証券等、自分で使用していない不動産、
ゴルフ会員権等、絵画等のが事業用資産の70%以上となる事業 - 資産運用型事業
※運用収入が、総収入金額の75%以上となる事業 - 性風俗関連特殊営業
- 個人である中小企業に該当しないとき
など
個人事業版事業承継の対象となる事業用資産
事業用資産の相続税が猶予または免除の対象となる事業用資産は次の資産となります。
- 贈与した年の前年の青色申告書の貸借対照表に計上されている資産であること
- 400㎡までの宅地等
※小規模宅地等の特例の適用を受けたときは一定の制限があります。 - 床面積800㎡までの建物
- 構築物、機械装置、器具備品等の固定資産税の課税対象となるもの
- 自動車税等の営業用の標準税率が適用されているもの
- 貨物運送用など一定の自動車
- 特許権等の無形固定資産
- 乳牛、果樹等の生物
など
個人事業版事業承継の対象とならない事業用資産
事業用資産の相続税が猶予または免除の対象とならない事業用資産は次の資産となります。
- 棚卸資産
- 不動産貸付用の宅地
- 不動産貸付用の建物
- 事業用の預貯金、現金
- 売掛金
- 事業用ではない資産
など
個人事業版事業承継の対象となる相続
事業用資産の相続税が猶予または免除の対象となる贈与は、次のとおりです。
- 先代事業者から後継者への事業用資産の相続
- 先代事業者の同一生計親族等が先代事業者から贈与または相続された事業用資産で、
その贈与または相続から1年以内に先代事業者の同一生計親族等から後継者への事業用資産の相続
個人事業版事業承継の猶予されている相続税が免除されるとき
次のどれかに該当したときは、猶予された相続税が免除されます。
- 後継者が亡くなったとき
- 一定期間経過後に、次の後継者(3代目など)へ事業用資産が贈与され
個人事業者の事業用資産の贈与税の猶予と免除の適用を受けたとき - 後継者に破産手続開始の決定などがあったとき
- 後継者が重度障害等になり事業を継続することができなくなったとき
- 事業継続が困難な一定の事由に該当し、事業用資産の資産の全部を譲渡または事業を廃止したとき
など

個人事業版事業承継の猶予されている相続税を払うとき
次のどれかに該当したときは、猶予された贈与税を払うことになります。
- 3年ごとに継続届出書の提出をしなかったとき
- 事業を廃止したとき
- 資産管理事業、性風俗関連特殊営業などに該当したとき
- 総収入金額がゼロになったとき
- 青色申告の承認が取り消し、または、取りやめたとき
- 先代から贈与を受けた事業用資産を事業に使わなくなった
※陳腐化等一定の理由で、廃棄し税務署に書類等を提出した場合を除く -
一定期限後に会社設立の現物出資のため事業承継した資産を移転し、税務署長の承認を受けたとき
など
個人事業者の事業承継により「贈与税」が猶予されていたとき
個人事業者の事業承継により贈与税の猶予を受けており、先代経営者が亡くなったときは、次のようになります。
- 猶予されていた贈与税が免除となります。
- 個人事業者の事業承継により贈与税の猶予と免除を受けていた事業用資産は、
贈与時の価額で、相続により取得したとみなされます。 - 都道府県知事の「円滑化法の確認」を受け、一定の要件に該当するときに、
個人事業者の事業承継により取得した事業用資産にかかる相続税の猶予を受けることができます。
令和3年度税制改正大綱|今後の変更予定
令和3年度税制改正大綱により、次の変更が予定されています。
個人事業者の事業用資産の相続税・贈与税の納税猶予制度の適用対象となる資産に次のものが追加される
- 贈与した人または亡くなった人の事業に使用していた乗用車で青色申告書の貸借対照表に計上されている取得価額500万円以下の部分
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