2017以降の相続税および贈与税の納税者の改正についてざっくり説明します。
2020年12月14日 令和3年度税制改正大綱について追記
相続税および贈与税の納税者の改正
2017(平成29)年4月1日以後に相続、遺贈および贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について国外を利用した租税回避の防止と日本で一時的に就労する優秀な外国人(=一時居住者)の就労の妨げとなる相続税または贈与税の課税リスクを除くため納税義務者の区分と課税財産の範囲について改正がありました。
相続税|納税義務者の区分と課税財産の範囲
※「国内財産のみ」と記載がない部分は、国内財産および国外財産のすべてが課税の対象となります。
※経過措置は「3.②」の経過措置のこと。
国外を利用した租税回避の防止策
- 期間の延長
次の(ア)および(イ)の要件に該当するときは、国内財産のみが課税の対象となります。- (ア)亡くなった人(被相続人)の要件
- 相続開始時に国内に住所がないこと
- 相続開始前10年(改正前5年)以内に国内に住所がないこと
- 非居住相続人に該当しないこと
- (イ)相続した人の要件
- 相続開始時に日本国内に住所がないこと
- 相続開始時に日本国籍であること
- 相続開始前10年(改正前5年)以内に国内に住所があること
- (ア)亡くなった人(被相続人)の要件
- 課税範囲の拡大
次の要件に該当するときは、国内財産のみが課税されていたものが、
国内財産+国外財産のすべてが課税されることになりました。ただし、
経過措置として平成29年4月1日~2022(令和4)年3月31日までの間は、
被相続人が平成29年4月1日から相続開始時まで引き続き国内に住所を有さず、
日本国籍がない方(=非居住外国人)は国内財産のみが課税されます。- 亡くなった人(被相続人)の要件
- 相続開始時に国内に住所がないこと。
- 相続開始前10年以内に国内に住所があること。
- 非居住相続人に該当しないこと。
- 相続した人の要件
- 相続開始時に日本国内に住所がないこと。
- 相続開始時に日本国籍ではないこと。
- 亡くなった人(被相続人)の要件
一時居住者の外国人の課税リスクの回避策
改正前は外国人でも相続開始時に日本国内に住所があったときは、国内財産及び国外財産のすべてに日本の相続税が課税されていました。
この課税リスクを理由に、優秀な外国人が日本で働く障害となっているとの指摘を受け、
一定の要件に該当するときは、相続開始時に日本国内に住所があったときでも国内財産のみが課税されることとなりました。
一時居住者の要件
一時居住者とは、相続開始時に出入国管理および難民認定法別表第一上欄の在留資格を有する人で、その相続開始時前15年以内のうち日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以内である方をいいます。
一時居住被相続人
次の要件のすべてに該当する亡くなった人(被相続人)のことをいいます。
- 相続開始時に出入国管理および難民認定法別表第一上欄の在留資格を有していた
- 相続開始時に日本国内に住所があった
- 相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下
非居住相続人①
次の要件のすべてに該当する亡くなった人(被相続人)のことをいいます。
- 相続開始時に日本国内に住所がなかったこと
- 相続開始前10年以内に日本国内に住所がある人のうち、
相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下である - 相続開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間期間の合計が10年以下
(その期間引き続き日本国籍を有していなかった人に限る。)
非居住相続人②
相続開始前10年以内に日本国内に住所を有したことがなかった亡くなった人(被相続人)で
国籍は関係ありません。
令和3年度税制改正大綱|今後の変更予定
令和3年度税制改正大綱により、日本に住む在留資格を持つ人からの国外財産の相続または贈与は、次の変更が予定されています。
次のどちらかに該当する人が、日本に住んでいる在留資格がある人から相続、遺贈、贈与により国外財産を取得したときは、相続税または贈与税が課税されない。
- 短期的に日本に居住する在留資格がある人
- 国外に住んでいる外国人等
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