自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の要件、無効、メリット等

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の要件、メリット、デメリットなどについてざっくり記載します。

遺言の種類(普通方式)

遺言の種類には、普通方式と特別方式があります。

遺言は、通常、普通方式により作成することになりますが、
普通方式のどれを選択するかは遺言をする人が自由に選択をすることができます。

特別方式とは、普通方式の遺言ができないなど特殊な事情のときに認められる方式で、
普通方式より手続きが簡単になっています。

  • 普通方式
    • 自筆証書遺言
      ※2019(平成31)年1月13日以降、民法改正により自筆証書遺言の緩和がされました。
    • 公正証書遺言
    • 秘密証書遺言
  • 特別方式
    • 死亡危急者遺言
    • 船舶遭難者遺言
    • 伝染病隔離者遺言
    • 在船者遺言
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自筆証書遺言

  • 自筆証書遺言
    自筆証書遺言とは、遺言をする人が、全文、日付、氏名を自筆し、押印して作成する遺言です。
    ※2019(平成31)年1月13日以降、民法改正により自筆証書遺言の緩和がされました。
  • 自筆証書遺言の要件
    自筆証書遺言とは、次のすべての要件を満たした遺言のことをいいます。
    作成した遺言を封筒へ封入することは要件とはされていません。
    遺言が封筒に入れ封印されていたときは家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封することになります。
    • 全文を遺言をする人自身が書くこと
      ※2019(平成31)年1月13日以降、民法改正により自筆証書遺言の緩和がされました。
    • 遺言の作成年月日を遺言をする人自身が書くこと
    • 遺言をする人自身の氏名を自分で書くこと
    • 遺言をする人自身で押印(実印、認印のどちらでも可)すること
  • 自筆証書遺言が無効となる場合
    作成した自筆証書遺言が次のようなときは無効となります。
    • パソコン、ボイスレコーダー、代筆などで作成されたとき
      ※2019(平成31)年1月13日以降、民法改正により自筆証書遺言の緩和がされ財産目録はパソコンでの作成が認められるようになりました。
    • 年月だけ記載されたもの
    • 「~年~月吉日」と記載されたもの
      など
  • 自筆証書遺言のメリット
    • 遺言内容を秘密にすることができる
    • 簡単に作成できる
    • 費用がかからない
  • 自筆証書遺言のデメリット
    • 紛失、偽造、変造などの可能性がある
    • 作成した遺言の存在を誰も知らないので見つからない可能性がある
    • 遺言が無効となる可能性がある
    • 遺言を発見した相続人などが、遺言について家庭裁判所の検認手続きが必要となる
      ※検認手続きとは、遺言の存在と内容を知らせること及び遺言書の偽造と変造を防止するための手続き
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公正証書遺言

  1. 公正証書遺言
    公正証書遺言とは、公証役場の公証人(裁判管、検察官などの法律実務に携わってきた法律の専門家)が作成する公文書の遺言となります。
  2. 公正証書遺言の要件
    公正証書遺言は次のすべての要件を満たした遺言のことをいいます。
    • 遺言をする人が遺言の内容を公証人に直接口頭で話すこと
    • 証人が2人以上立ち合いすること
    • 公証人が遺言の内容を筆記し、遺言をした人と証人に読み聞かせるか閲覧をさせること
    • 遺言をした人と証人が署名押印すること
    • 公証人が署名押印すること
  3. 公正証書遺言が無効となる場合
    作成した公正証書遺言が次のようなときは無効となります。
    • 病気など話している内容が不明でありで質問などに頷くだけで作成されたとき
      など
  4. 公正証書遺言のメリット
    • 公証人が作成するため、内容が正確で証拠力が高い
    • 文字を書けなくても作成できる
    • 公証人側でも遺言書の原本を保管される
      ※原則、20年保管されます。
    • 入院先、自宅などに公証人に来てもらい作成することができる
    • 遺言をした人に正本と謄本が交付される
    • 相続人などが遺言書を家庭裁判所で検認する必要がない
  5. 公正証書遺言のデメリット
    • 作成手数料がかかる
    • 証人2人以上が必要があること
      ※公証役場へ依頼すると手配してくれます。 ただし、有料です。
    • 証人に遺言の内容を知られる
      ※証人は守秘義務が課されます。

秘密証書遺言

  1. 秘密証書遺言
    秘密証書遺言とは、遺言があることは明らかにするが、その遺言の内容は秘密するために作成する遺言です。
  2. 秘密証書遺言の要件
    秘密証書遺言は次のすべての要件を満たした遺言のことをいいます。
    • 遺言をする人が遺言に署名押印すること
    • 遺言をする人がその遺言を封筒などに封入し、遺言に使用した印章で封印すること
    • 公証人、証人2人以上の前で封書を提出すること
    • 公証人が封書の提出日などを記載すること
    • 公証人、証人が署名押印すること
  3. 秘密証書遺言が無効となる場合
    作成した秘密証書遺言が要件を満たしていないときは無効となります。
    ただし、自筆証書遺言の要件を満たしているときは、自筆証書遺言として有効となります。
  4. 秘密証書遺言のメリット
    • 遺言があることを明らかにできる
    • 遺言の内容を秘密にできる
    • パソコン、代筆などで作成してもよい
      ※代筆のときは、筆者の氏名・住所を申述する必要があります。
  5. 秘密証書遺言のデメリット
    • 遺言の内容に公証人が関与しない
    • 手数料がかかる
    • 証人2人以上が必要があること
    • 遺言をする人が保管が任させること
      ※公証役場では、秘密証書遺言をしたことのみが記録され、遺言の内容は記録されません。

上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。
具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。

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