中小企業等が経営強化法に規定される「経営強化設備等を取得したときの全額即時の特別償却と7%の特別控除」についてざっくり説明します。
2020年12月15日 令和3年度税制改正大綱について追記
経営強化設備等(A類型とB類型)を取得したときの特別償却と特別控除
中小企業等経営強化法の認定(経営革新等支援機関のサポートを受けるができます。)を受けた経営力向上計画に基づき一定の設備を新規取得(制作、建設)して指定事業の用に使い始めたときは、使い始めた年度に、全額を即時償却又は税額控除のどちらかを選択適用することができます。
経営強化設備等のデジタル化(C類型)を取得したときの特別償却と特別控除
新型コロナウイルスの影響により、中小企業等経営強化税制が拡充され、生産性向上設備と収益力強化設備の類型に加えて、「テレワーク等の設備を購入したときの【デジタル化設備のC類型】」が追加されることになりました。
経営強化設備等の特別償却と特別控除|平成31年度改正
経営強化設備等の特別償却と特別控除の平成31年度改正により次のようになりました。
- 適用期限が2年間延長され、2021(令和3)年3月31日までとなりました
- 工場や店舗等の休憩室の冷暖房やテレワーク用PC等の設備が対象であることが明確にされた
- 大法人に完全(100%)支配されている普通法人が対象外とされた
※大法人=資本金が5億円以上の法人など - 大規模法人に完全(100%)支配されている普通法人が対象外された
※大規模法人=大法人の100%子法人など
経営強化設備等の対象となる法人と個人事業者
経営強化設備等の対象となる法人と個人事業者は、青色申告書を提出するもののうち、次のどれかに該当する中小事業者等となります。
- 青色申告書を提出すること
- 次のどれかに該当する中小事業者等
- 資本金、出資金が1億円以下の法人
- 資本金、出資金を有しない法人のうち、常時使用する従業員が1000人以下の法人
- 常時使用する従業員が1000人以下の個人事業者
ただし、
資本金が1億円以下の法人でも次のどれかに該当したときは対象外となります。
- 大規模法人(資本金1億円超または常時使用従業員が千人超)から1/2以上の出資を受ける法人
- 複数の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人
- 平成31年度改正により、次の法人が対象外となります。
- 大法人により完全(100%)支配されている普通法人
※大法人=資本金が5億円以上の法人など - 大規模法人に完全(100%)支配されている普通法人が対象外とされた
※大規模法人=大法人の100%子法人など
- 大法人により完全(100%)支配されている普通法人
- 平成29年度改正により、2019年4月1日以後は、適用除外事業者に該当する法人が対象外となります。
※適用除外事業者=前3年間の所得金額が年平均15億円を超える法人
経営強化設備等の対象なる期間
経営強化設備等の対象なる期間は、平成29年4月1日から平成31年3月31日2021年3月31日までの間に取得等したものに適用があります。
※平成31年度改正によ2年間延長されました。
経営強化設備等の特別償却を選択したとき
経営強化設備等の特別償却を選択したときは、全額を即時償却することができます。
中小企業・個人事業者が減価償却資産を購入したときについてざっくり記載します。2023年1月18日 追記減価償却資産を購入したときに確認したい7項目減価償却資産を購入したときに、購入金額、使用できる期間、青色申告などによ[…]
経営強化設備等の税額控除と選択したとき
経営強化設備等の税額控除と選択したときは、以下のどちらか少ない金額が控除できます。
- 取得価額×10%
※資本金が3000万円超1億円以下のときは「7%」 - 税額×20%
※税額控除は、次の税額控除の合計で法人税の20%までが上限となります。- 経営強化設備等の税額控除
- 投資促進税制の税額控除
- 経営改善設備(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)の税額控除
※その年度で控除しきれない金額があるときは、1年間の繰越ができます。
※一つの資産で特別償却と税額控除の両方を受けることはできません。
経営強化設備等の一定の設備
経営強化設備等の一定の設備は、生産性向上設備(A類型)または収益力強化設備(B類型)に分類されます。
A類型|経営強化設備等の生産性向上設備
経営強化設備等の生産性向上設備(A類型)は、次の①~③のすべてに該当したものとなります
- 生産性向上設備の要件
- 工業会等の証明書を取得したもの。
証明書の発行は、設備メーカー等に依頼します。 - 経営強化法の認定を受けること
- 経営力向上の指標が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備
- 工業会等の証明書を取得したもの。
- 取得価額の要件
- 機械装置 1台の取得価額 160万円以上
- 測定工具及び検査工具、器具備品 1台の取得価額 30万円以上
- 建物付属設備 一の取得価額 60万円以上
- ソフトウェア 一の取得価額 70万円以上
※ソフトウェアは情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限ります。
- 販売開始時期の要件
- 機械装置 10年以内
- 測定工具及び検査工具 5年以内
- 器具備品 6年以内
- 建物付属設備 14年以内
- ソフトウェア 5年以内
B類型|経営強化設備等の収益力強化設備
経営強化設備等の収益力強化設備(B類型)は、次の①~③のすべてに該当したものとなります。
- 収益力強化設備の要件
- 経済産業大臣(所轄の経済産業局)から確認書を取得したもの。
※経産局への確認申請は設備取得前に行う必要があります。 - 経営強化法の認定を受けること
- 年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる
- 経済産業大臣(所轄の経済産業局)から確認書を取得したもの。
- 年平均の投資利益率
年平均の投資利益率
=(営業利益+会計上の減価償却費)の取得等の翌年度以降3年度の平均額÷取得等の年度の設備の取得価額の合計額 - 取得価額の要件
- 機械装置 1台の取得価額 160万円以上
- 工具、器具備品 1台の取得価額 30万円以上
- 建物付属設備 一の取得価額 60万円以上
- ソフトウェア 一の取得価額 70万円以上
経営強化設備等の対象とならないとき
経営強化設備等の対象とならない設備等は、次のとおりです。
- 中古品
- 国外での投資であること
- 事務用器具備品
- 本店、寄宿舎等に係る建物附属設備等
- 設備の修繕等
経営強化設備等の適用を受けるには
経営強化設備等の適用を受けるには、つぎの手続き等をする必要があります。
- (A類型)設備メーカー等に証明書の発行依頼をし、証明書を入手する。
- (B類型)経済局への確認申請は設備取得前に行う。
- 「経営力向上計画」を 策定し、各事業分野の担当省庁に申請し、経営強化法の認定を受ける。
※設備の取得は、原則、経営力向上計画の認定を受けてから行います。
設備取得後に経営力向上計画の申請をする場合は、取得日から60日以内に計画が受理される必要があり、
税制の適用を受けるには事業年度内に認定を受ける必要があります。 - 申告する。
経営力向上設備等に係る固定資産税の特例とダブル適用
経営力向上設備等に係る固定資産税の特例とダブル適用が可能です。
令和3年度税制改正大綱|今後の変更予定
関連法令の改正を前提に、次の変更が予定されています。
- 適用期限が2年延長される
- 計画終了年度に修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画を実施するために必要不可欠な節義が追加される
- 所得税(個人事業者)も同様
2020年12月10日に令和3年度税制改正大綱が公表されました。令和3年度税制改正大綱のうち法人税のおもな今後の変更について記載します。中小企業者等の法人税の軽減税率の特例次の変更が予定されています。適用期限を2年延長→2[…]
その他の特別償却と税額控除
経営強化設備等を取得時の100%即時の特別償却または10%の税額控除以外の特別償却または税額控除は、おもに次のようなものがあります。
- テレワーク等設備を購入したときの100%即時償却と10%税額控除
- 地域未来投資促進税制を利用したときの50%特別償却または5%税額控除
- 経営改善設備を取得したときの30%増の特別償却と7%の税額控除
- 投資促進税制の設備を購入時の30%増の特別償却と7%の税額控除
- IOT投資を5000万円以上した時の30%特別償却と5%税額控除
- 地方に本社機能を移転・拡充したときの25%特別償却と7%税額控
- 地方に本社機能を移転拡充をしたときの雇用促進税制90万円税額控除
- 2018年4月以降に保育施設用設備を取得したときの15%特別償却
- 2017年4月以降の給与の増加と設備投資したときの25%税額控除
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具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。
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