2019年12月令和2年税制改正大綱が公表されました。
「国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例」について、内容をざっくり記載してみます。
今後、新しい情報がわかり次第、順次、追記していきます。
なお、税制改正大綱は、通常、3月の国会で承認され、4月以降に施行される予定です。
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例
2019年12月税制改正大綱により、個人が所有する国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例が創設される予定です。
個人が国外中古建物の不動産賃貸収入(不動産所得)があり、その国外中古建物の賃貸の儲け(所得)がマイナス(損失)となるときに、そのマイナス(損失)のうち減価償却費分のマイナス(損失)は、なかったものとなります。
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の適用開始時期
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の適用開始時期は、2021(令和3)年以後から適用される予定です。
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の国外中古建物とは
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の「国外中古建物」とは、次の要件に該当する建物です。
- 国外にある中古の建物
- その建物を個人で所有(取得)している
- その建物が賃貸され個人で使用されるか、法人の事業用に使用されている
- その建物の(減価)償却費の計算を次の耐用年数の方法で計算している
- 法定耐用年数の全部を経過している資産のとき
法定耐用年数×20% - 法定耐用年数の一部を経過している資産のとき
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20% - その不動産所得の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数
※使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付があるときは除かれます
- 法定耐用年数の全部を経過している資産のとき
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の具体例
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例の具体例は、次のようになります。
国外中古建物の賃貸収入 800,0000円
減価償却費以外の経費 1,000,000円
減価償却費 400,000円
国外中古建物の不動産所得=800,000円-1,000,000円-400,000円=-600,000円
このときに、
-600,000円のうち、減価償却費400,000円はなかったものとなるので、
-600,000円+400,000円=-200,000円が、国外中古建物の不動産所得の損失となります。
この-200,000円を不動産所得、事業所得、給与所得から控除される金額となります。
複数の国外中古建物を所有するときの不動産所得の損益通算の特例
個人が複数の国外中古建物を所有しているときの不動産所得の損益通算の特例は、次のようになります。
- 国外中古建物A
国外中古建物Aの賃貸収入 800,0000円
国外中古建物Aの減価償却費以外の経費 1,000,000円
国外中古建物Aの減価償却費 400,000円
国外中古建物Aの不動産所得=800,000円-1,000,000円=-600,000円
- 国外建物B
国外建物Bの賃貸収入 1,000,0000円
国外建物Bの減価償却費以外の経費 500,000円
国外建物Bの減価償却費 400,000円
- 国外建物Bの不動産所得=1,000,000円-500,000円-400,000円=100,000円
- 国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例
- 国外中古建物Aの不動産所得=-600,000円
- 国外建物Bの不動産所得=100,000円
- 国外中古建物Aと国外建物Bの不動産所得
=-600,000円+100,000円=-500,000万円(AとBの合計)
-500,000万円+400,000円(国外中古建物Aの減価償却費)
=-100,000円-100,000円が、国外中古建物の不動産所得の損失となります。
国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例を受けた国外中古建物を譲渡したとき
国外中古建物を譲渡したときに、その国外中古建物の取得費から控除する減価償却費のうち、国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例を受けて減価償却費がなかったものとされた金額は、取得費から控除しません。
国外中古建物の譲渡所得=売却金額-(取得費-減価償却費+減価償却費がなかったものとされた金額)-譲渡費用
「国外中古建物の不動産所得の損益通算の特例」については、今後、新しい情報がわかり次第、順次、追記していきます。
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