地域経済牽引事業を促進することを目的とする地域未来投資促進税制を利用したときは、
最大50%特別償却または最大5%税額控除をすることができます。
今回は、この地域未来投資促進税制を利用したとき特別償却と税額控除をこのざっくり解説します。
2020年12月15日 令和3年度税制改正大綱について追記
- 1 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除
- 2 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の要件
- 3 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の手続きの基本的な流れ
- 4 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる法人
- 5 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる期間
- 6 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等
- 7 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等の取得価額等の合計額
- 8 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象とならない資産等
- 9 地域未来投資促進税制の特別償却の対象とならないとき
- 10 地域未来投資促進税制の税額控除の対象とならない法人
- 11 地域未来投資促進税制の特別償却を選択したとき
- 12 地域未来投資促進税制の税額控除を選択したとき
- 13 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除のダブル適用は
- 14 地域未来投資促進税制とダブル適用はできない他の特別償却と税額控除
- 15 地域未来投資促進税制と租税特別措置法上の圧縮記帳のダブル適用は
- 16 地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるには
- 17 令和3年度税制改正大綱|今後の変更予定
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除は、対象の法人が、一定の期間内に、対象の資産等を取得し、事業のために使用を開始したは、最大50%特別償却又は最大5%税額控除できるものです。
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の要件
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるには、次の2つの要件が必要となります。
- 地域経済牽引事業の要件
- 課税特例の要件
地域未来投資促進税制の要件①|地域経済牽引事業の要件
地域未来投資促進税制の地域経済牽引事業の要件とは、各都道府県と関係市町村の基本計画に沿った次の要件を満たし、都道府県の承認を受ける必要があります。
- 地域の特性を活用すること
- 高い付加価値を創出すること
- 地域の事業者に対する経済的効果が見込まれること
各都道府県と関係市町村が基本計画は、「経済産業省の同意基本計画一覧」をご覧ください。
地域未来投資促進税制の要件②|課税特例の要件
地域未来投資促進税制の課税特例の要件とは、次のとおりで、国の確認を受ける必要があります。
- 課税の特例の要件
- 先進性を有すること
※生産活動の基盤に著しい被害を受けた、次の被災地域は除かれます。
※災害救助法の適用地域は「内閣府防災のHP」をご覧ください。- 平成28年熊本地震(対象地域:熊本県)
- 平成30年7月豪雨(対象地域:同災害による災害救助法の適用地域)
- 令和元年台風第19号(対象地域:同災害による災害救助法の適用地域)
- 平成30年7月豪雨及び令和元年台風第19号における災害救助法の適用地域
- 総投資額が2,000万円以上であること
- 前事業年度の減価償却費の10%を超える投資額であること
- 対象事業の売上高伸び率が「ゼロ」を上回り、かつ、過去5事業年度の対象事業の伸び率が「+5%以上」
- 先進性を有すること
- 課税の特例の上乗せ要件
- 課税の特例の要件①~④を満たすこと
- 平成31年4月1日以降に承認を受けた事業であること
- 直近事業年度の付加価値額増加率が8%以上であること
地域未来投資促進税制の課税特例の要件|先進性とは
地域未来投資促進税制の課税特例の要件の先進性は、以下の4つの基準で判断します。
- 開発又は生産する製品の先進性
- 開発又は提供する役務(サービス)の先進性
- 製品の生産又は販売の方式の先進性
- 役務の提供(サービス)の方式の先進性
詳細は、経済産業省の「地域未来投資促進法における地域経済牽引事業計画のガイドライン」をご覧ください
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の手続きの基本的な流れ
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の手続きの基本的な流れは、つぎのようになります。
- 都道府県が策定した基本計画に則した「地域経済牽引事業計画」について、都道府県から承認を受ける
- 都道府県の承認後に、先進性等に関する国(主務大臣)の確認を受けるための申請書を提出する
- 国の確認が得られた後に、設備等の取得する
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる法人
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる法人は、次にあてはまる法人です。
- 青色申告書を提出する法人
- 承認地域経済牽引事業者である法人
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる期間
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる期間は、次の期間までの間に開始する事業年度となります。
- 平成29年7月31日~2021(令和3)年3月31日までの間に開始する事業年度
ただし、
この期間内であっても、次の場合は、適用を受けることができません。
- 解散(合併による解散を除く。)の日を含む事業年度
- 清算中の各事業年度
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等は、承認地域経済牽引事業計画に従って特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をするときに、特定地域経済牽引事業施設等を構成する次の資産(特定事業用機械等)となります。
- 新品の機械装置
- 新品の器具備品
- 新品の建物及びその附属設備並びに構築物
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等の取得価額等の合計額
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象となる資産等の取得価額等の合計額は、次のとおりです。
- 承認地域経済牽引事業計画に定められた施設で取得価額の合計額が2,000万円以上のもの
- 設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が2,000万円以上のもの
- 補助金を受けて圧縮記帳したときは、圧縮後の金額が2,000万円以上のもの
地域未来投資促進税制の取得価額は税抜か税込か
地域未来投資促進税制の取得価額は、消費税を税込経理しているときは税込みで、税抜経理をしているときは税抜で2,000万円以上かを判断することになります。
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象とならない資産等
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の対象とならない資産等は、つぎのとおりです。
- 貸付けをするために取得した資産
- 中古品
- 設備の修繕
- オペレーティングリース取引
- 地域経済牽引事業計画の承認前に取得した設備等
地域未来投資促進税制の特別償却の対象とならないとき
所有権移転外リース取引により取得した資産は、地域未来投資促進税制の特別償却は適用できません。
地域未来投資促進税制の税額控除のみ適用されます。
地域未来投資促進税制の税額控除の対象とならない法人
中小企業者または農業協同組合等以外の法人が平成30年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間に開始する各事業年度に、次のどちらにも該当しないときは、地域未来投資促進税制の税額控除の適用が受けられません。
- 継続雇用者給与等支給額 > 継続雇用者比較給与等支給額
- 国内設備投資額 > 当期償却費総額×10%
ただし、
その事業年度の所得金額が前事業年度の所得金額以下であるときは地域未来投資促進税制の税額控除の適用が受けられます。
継続雇用者給与等支給額とは
継続雇用者給与等支給額とは、法人の適用年度と前事業年度の期間内の各月に、その法人の給与等の支給を受けた国内雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限られ、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に定める継続雇用制度の対象者を除く。)に対する適用年度の給与等の支給額をいいます。
継続雇用者比較給与等支給額とは
継続雇用者比較給与等支給額とは、法人の適用年度と前事業年度の期間内の各月に、その法人の給与等の支給を受けた国内雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限られ、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に定める継続雇用制度の対象者を除く。)に対する前事業年度の給与等の支給額をいいます。
国内設備投資額とは
国内設備投資額とは、法人が適用年度に取得等をした国内にある法人の事業の用に供する減価償却資産(時の経過によりその価値の減少しないものは除く)でその適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいいます。
当期償却費総額とは
当期償却費総額とは、法人が所有する減価償却資産につき適用年度に、その償却費として損金経理をした金額の合計額をいいます。
中小企業者とは
中小企業者とは、次に該当する法人をいいます。
- 資本金の額(又は出資金の額)が1億円以下の法人で、次に該当しない法人
- 発行済株式又は出資(平成31年4月1日以後に開始する事業年度では、自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の1/2以上を単体の大規模法人に所有されている法人
- 上記のほか、発行済株式(又は出資(平成31年4月1日以後に開始する事業年度では、自己の株式又は出資を除く。))の総数又は総額の2/3以上を複数の大規模法人に所有されている法人
- 受託法人
- 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人(受託法人を除く)
ただし、
平成31年4月1日以後に開始する事業年度で、中小企業者のうち適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)に該当するものは、中小企業者から除かれます。
大規模法人とは
大規模法人とは、次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。
- 資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える法人
- 資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
- 平成31年4月1日以後に開始する事業年度に、次にどちらかに該当する法人
- 大法人による100%(完全)支配関係がある法人
- 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(又は出資)の全部を直接又は間接に保有されている法人(①に掲げる法人を除く)
大法人とは
大法人とは、次に掲げる法人をいいます。
- 資本金の額(又は出資金の額)が5億円以上の法人
- 相互会社及び外国相互会社のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
- 受託法人
地域未来投資促進税制の特別償却を選択したとき
地域未来投資促進税制の特別償却限度額は、次の取得価額の合計額に区分して計算します。
- 取得価額の合計額が80億円以下のとき
- 取得価額の合計額が80億円を超えるとき
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円以下のときの特別償却
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円以下のときの特別償却は、次のようになります。
機械及び装置並びに器具及び備品
上乗せ要件を満たしているとき
※承認地域経済牽引事業に係る確認事業年度の前事業年度に「付加価値額が前々事業年度より8%以上増加」しているとき
特別償却限度額=取得価額×50%①以外のとき
特別償却限度額=取得価額×40%
建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額=取得価額×20%
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円を超えるときの特別償却
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円を超えるときの特別償却は、次のようになります。
機械及び装置並びに器具及び備品
上乗せ要件を満たしているとき
※承認地域経済牽引事業に係る確認事業年度の前事業年度に「付加価値額が前々事業年度より8%以上増加」しているとき
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×50%①以外のとき
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×40%
建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×20%
平成31年3月31日までに取得等をした対象資産は、100億円が取得価額の合計額の上限となります。
地域未来投資促進税制の特別償却の償却不足額
地域未来投資促進税制の特別償却を償却限度額まで計上しなかった償却不足額は、翌事業年度まで繰り越すことができます。
地域未来投資促進税制の税額控除を選択したとき
地域未来投資促進税制の税額控除限度額は、次の取得価額の合計額に区分して計算します。
ただし、
その税額控除が、その事業年度の法人税額の20%相当額を超えるときは、法人税額の20%相当額が限度となります。
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円以下のときの税額控除
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円以下のときの税額控除は、次のようになります。
機械及び装置並びに器具及び備品
上乗せ要件を満たしているとき
※承認地域経済牽引事業に係る確認事業年度の前事業年度に「付加価値額が前々事業年度より8%以上増加」しているとき
特別償却限度額=取得価額×5%①以外のとき
特別償却限度額=取得価額×4%
建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額=取得価額×2%
ただし、
その税額控除が、その事業年度の法人税額の20%相当額を超えるときは、法人税額の20%相当額が限度となります。
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円を超えるときの税額控除
地域未来投資促進税制の取得価額の合計額が80億円を超えるときの特別償却は、次のようになります。
機械及び装置並びに器具及び備品
上乗せ要件を満たしているとき
※承認地域経済牽引事業に係る確認事業年度の前事業年度に「付加価値額が前々事業年度より8%以上増加」しているとき
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×5%①以外のとき
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×4%
建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額=80億円×(取得価額÷取得価額の合計額)×2%
ただし、
その税額控除が、その事業年度の法人税額の20%相当額を超えるときは、法人税額の20%相当額が限度となります。
平成31年3月31日までに取得等をした対象資産は、100億円が取得価額の合計額の上限となります。
地域未来投資促進税制の税額控除を選択したときの繰越控除
地域未来投資促進税制の税額控除を選択したときの繰越控除はできません。
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除のダブル適用は
一つ資産で地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除のダブル適用はできません。
地域未来投資促進税制とダブル適用はできない他の特別償却と税額控除
一つ資産で地域未来投資促進税制と他の特別償却または税額控除のダブル適用はできません。
他の特別償却または税額控除とは、おもに次のようなものがあります。
- 経営強化設備等を取得時の100%即時の特別償却または10%の税額控除
- テレワーク等設備を購入したときの100%即時償却と10%税額控除
- 経営改善設備を取得したときの30%増の特別償却と7%の税額控除
- 投資促進税制の設備を購入時の30%増の特別償却と7%の税額控除
- IOT投資を5000万円以上した時の30%特別償却と5%税額控除
- 地方に本社機能を移転・拡充したときの25%特別償却と7%税額控
- 地方に本社機能を移転拡充をしたときの雇用促進税制90万円税額控除
- 2018年4月以降に保育施設用設備を取得したときの15%特別償却
- 2017年4月以降の給与の増加と設備投資したときの25%税額控除
地域未来投資促進税制と租税特別措置法上の圧縮記帳のダブル適用は
一つ資産で地域未来投資促進税制と租税特別措置法上の圧縮記帳のダブル適用はできません。
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるには
地域未来投資促進税制の特別償却と税額控除の適用を受けるには、確定申告書等に明細書を添付して申告する必要があります。
令和3年度税制改正大綱|今後の変更予定
令和3年度税制改正大綱により、次の変更が予定されています。
- 適用期限を2年間延長する
- サプライチェーンの維持・強化を目的とする類型を追加する
- 主務大臣の確認要件のうち、先進性の要件の見直しをする
- 特別償却と税額控除の引上げに、投資収益率と労働生産性の伸び率が一定水準以上が見込まれることを確認する
- 承認地域経済牽引事業計画の実施期間内は、他の地域経済牽引事業計画の主務大臣の確認は受けられない
- 承認地域経済牽引事業計画の実施期間後は、他の地域経済牽引事業計画の主務大臣の確認を受けるときは投資収益率と労働生産の伸び率の実績を確認する
- 個人事業者(所得税)も同様
2020年12月10日に令和3年度税制改正大綱が公表されました。令和3年度税制改正大綱のうち法人税のおもな今後の変更について記載します。中小企業者等の法人税の軽減税率の特例次の変更が予定されています。適用期限を2年延長→2[…]
上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。
具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。
掲載の文章等の無断使用、無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士佐藤智明に帰属します。