税理士の佐藤智明です。
個人事業者が消費税を納付義務が免除されるかどうかは、個人事業者が勝手に決められません。
この記事を読むことによって、個人事業者が消費税の免税事業者になるのか、課税事業者なるのかがわかるようになります。
個人事業者の消費税の納付義務の判定順序についてざっくり解説します。
個人事業者の消費税の納税義務の判定順序
個人事業者の消費税の納税義務があるかは、判定基準があり、すべての判定基準により消費税の課税事業者に該当しないときは、消費税の納税義務が免除されることになります。
また、判定基準は①→②→③→④→⑤の順番に判定していくことになります。
- 基準期間の課税売上高の判定
- 消費税の課税事業者を選択したときの判定
- 特定期間の課税売上高(給与等)の判定
※平成25年1月1日以後に開始した事業年度が対象 - 相続があったときの判定
- 高額特定資産の仕入れ等の判定
消費税の納税義務の判定するときの「基準期間」と「課税売上高」
まずは、個人事業者の消費税の納税義務があるかの判定をするときの「基準期間」と「課税売上高」をざっくり解説します。
基準期間とは?
個人事業者の消費税の納税義務の判定をするときの「基準期間」とは、次のようになります。
- 前々年の1月1日~12月31日
たとえば、令和1(平成31)年の基準期間は、平成29年1月1日~12月31日になります。
課税売上高とは?
消費税の納税義務があるかの判定をするときの「課税売上高」とは、次のようになります。
- 8%や10%などの消費税が課税される売上
- 日本から外国に輸出した輸出売上
個人事業者の消費税の納税義務の判定①|基準期間の課税売上高の判定
個人事業者のその年の「基準期間の課税売上高>1,000万円」のときは、その年は消費税の納税義務ある課税事業者となります。
たとえば、
令和1(平成31)年の「基準期間の課税売上高」は、
- 基準期間は、「前々年」のこと
- 課税売上高は、「8%や10%などの消費税が課税される売上」と「日本から外国に輸出した輸出売上」のこと
なので、
「平成29年1月1日~12月31日の期間中」の「8%や10%などの消費税が課税される売上と日本から外国に輸出した輸出売上の合計額」のことになります。
個人事業者の消費税の納税義務の判定②|消費税の課税事業者を選択したとき
個人事業者のうち消費税の納税義務の判定基準の①に該当しないときに、次の日までに税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出したときは、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
- 開業した年
開業した年の12月31日まで
※税務署税務署に持ち込みで提出するときは、12月の最終開庁日まで - 開業した年以外の年
課税事業者になろうとする年の前年の末日まで
※税務署に持ち込みで提出するときは、12月の最終開庁日まで
課税事業者選択届出書を提出したときは、事業を廃止以外の次の期間内は、課税事業者の選択をやめることができません。
- 原則 課税事業者となった日から2年間
- 例外
- 課税事業者となった1年目の間に調整対象固定資産を購入したとき
課税事業者となった日から3年間 - 課税事業者となった2年目の間に調整対象固定資産を購入したとき
課税事業者となった日から4年間※①または②のときは、調整対象固定資産を購入した期と翌期は簡易課税選択届出書を提出することはできません
- 課税事業者となった1年目の間に調整対象固定資産を購入したとき
また、課税事業者の選択をやめるときは「課税事業者選択不適用届出書」を課税事業者の選択をやめようとする課税期間の初日の前日までに税務署に提出する必要があります。
調整対象固定資産とは?
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、税抜き100万円以上の次の資産になります。
- 建物、構築物
- 機械及び装置
- 船舶、航空機、車両及び運搬具
- 工具、器具及び備品
- 鉱業権その他の資産
個人事業者の消費税の納税義務の判定③|特定期間の課税売上高(給与等)判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①と②に該当しないときに、特定期間内の「課税売上高の合計」または「給与等支払額の合計」のうち、どちらか個人事業者が選んだ方が1,000万円を超えたときは、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
- 特定期間とは、次の期間になります。
- 原則
その年の前年1月1日~6月30日までの期間 - その年の前年年1月1日~6月30日までの間に開業したとき
その開業日~6月30日までの期間
- 原則
ただし、その年の前年7月1日~12月31日の間に開業したときは、この特定課税期間の判定をする必要はありません。
個人事業者の消費税の納税義務の判定④|相続があったときの判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①~③に該当しないときに、相続があり、亡くなった人の事業を引き継いだときに、相続があった年、翌年、翌々年に一定の条件に該当したときは、その年は消費税の納税義務がある課税事業者となります。
また、事業を引き継いだ相続人には、亡くなった人が提出していた「課税事業者選択届出書」「課税期間特例選択等届出書」「簡易課税選択届書」は自動的に引き継がれません。
相続があった【年】の判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①~③により課税事業者に該当しないときに、相続があり、亡くなった人の事業を引き継いだときの相続があった年は「亡くなった人の基準期間の課税売上高」が1,000万円を超えるときは、「亡くなった人の相続があった日の翌日~12月31日までの期間」は、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
- ポイント
- 事業を引き継いだ人が納税義務の判定基準①~③で課税事業者になっていない
- 基準期間の課税売上高は、「亡くなった人の基準期間の課税売上高」で判断する
- 「相続があった日の翌日~12月31日までの期間」の納税義務がある
相続があった年の【翌年】の判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①~③により課税事業者に該当しないときに、相続があり、亡くなった人の事業を引き継いだときの相続があった年の翌年は「亡くなった人+事業を引き継いだ相続人の基準期間の課税売上高の合計」が1,000万円を超えるときは、相続があった年の翌年は、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
- ポイント
- 事業を引き継いだ人が納税義務の判定基準①~③で課税事業者になっていない
- 基準期間の課税売上高は、「亡くなった人の基準期間の課税売上高」と「相続により事業を引き継いだ人の基準期間の課税売上高」を「合計」で判断する
相続があった年の【翌々年】の判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①~③により課税事業者に該当しないときに、相続があり、亡くなった人の事業を引き継いだときの相続があった年の翌々年は「亡くなった人+事業を引き継いだ相続人の基準期間の課税売上高の合計」が1,000万円を超えるときは、相続があった年の翌年は、消費税の納税義務がある課税事業者となります。
- ポイント
- 事業を引き継いだ人が納税義務の判定基準①~③で課税事業者になっていない
- 基準期間の課税売上高は、「亡くなった人の基準期間の課税売上高」と「相続により事業を引き継いだ人の基準期間の課税売上高」を「合計」で判断する
個人事業者の消費税の納税義務の判定⑤|高額特定資産の仕入れ等の判定
個人事業者が消費税の納税義務の判定基準の①~④により課税事業者に該当しないときに、平成28年4月1日以後に、次に該当したときは、消費税の納税義務ある課税事業者となります。
また、簡易課税の適用を受けることもできません。
- 高額特定資産を購入したときに、原則の課税事業者であったとき(免税事業者や簡易課税の適用を受けていない課税期間)
- 高額特定資産の購入した課税期間の初日以後3年を経過する日の課税期間までの各期間
高額特定資産とは?
高額特定資産とは、次のどちらかの資産で、一の取引単位で、税抜きで1,000万円以上するものをいいます。
- 棚卸資産
- 調整対象固定資産
まとめ
今回は、「個人事業者の消費税の納税義務の判定順序」についてざっくり解説しました。
- 基準期間の課税売上高の判定
- 消費税の課税事業者を選択したときの判定
- 特定期間の課税売上高(給与等)の判定
※平成25年1月1日以後に開始した事業年度が対象 - 相続があったときの判定
- 高額特定資産の仕入れ等の判定
上記の全部において納税義務がないと判定されて、消費税の納税義務が免除される免税事業者となります。
上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。
具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。
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