令和2(2020)年7月10日から法務局の遺言保管所が自筆証書遺言を保管するサービスが開始します。
今回は、この自筆証書遺言保管制度についてざっくり説明します。
2020年7月9日までの自筆証書遺言の保管方法
2020年7月9日まで自筆証書遺言の保管方法は、偽造、変造の可能性があるため、遺言する人が自分で保管している場合が多く、次のようなデメリットがありました。
- 紛失してしまう
- 作成した遺言の存在を誰も知らないので見つからない可能性がある
- 相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんされる可能性がある
- 家庭裁判所の検認手続きが必要である
など
2020年7月10日以降に開始される自筆証書遺言保管制度
2020年7月10日以降、自筆証書遺言を法務局に保管することができるようになります。
遺言を作成した人は保管されている遺言書を閲覧することができ、また保管を撤回することができます。
なお、
遺言者が生きているときは、遺言者以外の人が遺言書の閲覧等をすることができません。
自筆証書遺言保管制度を利用するメリット
自筆証書遺言保管制度を利用する主なメリットは、つぎのようなものがあります。
- 紛失しない
- 遺言書の有無の把握が簡単にできる
- 改ざん等されない
- 家庭裁判所による検認がいらない
- 相続人の1人が遺言書の証明書の交付や閲覧したときに、他の相続人に遺言書が保管されていることが通知される
- 相続開始後に遺言書の証明書の交付ができる
- 相続開始後に遺言書の閲覧ができる
など
自筆証書遺言を保管するときの手続き
遺言書保管所に自筆証書遺言を保管するときは、次のような手続きを行うことになります。
- 自筆証書遺言を作成する
- 申請書を作成する
- 申請をする遺言保管所を決め、予約をする
- 遺言を作成した本人が法務局(遺言書保管所)に行って申請、手続きをする
- 保管証を受け取る
申請ができる遺言書保管所
自筆証書遺言保管制度の申請ができる保管所は、次のうちから選択することになります。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
ただし、すでに他の遺言書を保管所に預けているときは、その保管所になります。
予約方法
申請等をするときの予約方法は、つぎのとおりになります。
- 法務局手続案内予約サービスの専用HPにおける予約
- 法務局(遺言書保管所)への電話又は窓口における予約
→ 平日8:30~17:15まで(土・日・祝日・年末年始を除く。)
➡電話番号や所在地は【全国の法務局(遺言書保管所)一覧】参照。
また、予約時の注意事項は、つぎのとおりになります。
- 予約は,手続をされるご本人が行ってください。
- 予約を行うことができる期間は,当日から30日先までです。
- 予約日の前々業務日の午前中まで予約することが可能です。
例)7/13(月)の予約は,7/9(木)12:00まで予約可能。 - 当日の予約はできません。
申請をするときに必要な書類等
自筆証書遺言保管制度の申請をするときには、つぎの書類等が必要となります。
- 自筆証書遺言
※ホチキス止めはしていないもの
※封筒はいらない - 自筆証書遺言保管制度の申請書
※あらかじめ記入したものを持参 - 添付書類
※本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内) - 本人確認書類
※有効期限内のもの
※運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど - 手数料
自筆証書遺言保管の手数料
申請・請求の種別 | 申請・請求者 | 手数料 |
---|---|---|
遺言書の保管の申請 | 遺言者 | 一件につき 3900円 |
遺言書の閲覧の請求(モニターで画像等閲覧) | 遺言者 関係相続人等 | 一回につき 1400円 |
遺言書の閲覧の請求(原本) | 遺言者 関係相続人等 | 一回につき 1700円 |
遺言書情報証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき 1400円 |
遺言書保管事実証明書の交付請求 | 関係相続人等 | 一通につき 800円 |
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 | 遺言者 関係相続人等 | 一の申請に関する申請 書等又は一の撤回に関 する撤回書等につき 1700円 |
遺言者が保管されている自筆証書遺言を見る(閲覧する)ときの手続き
遺言者が遺言書保管所に保管している自筆証書遺言を見る(閲覧)ときは、次のような手続きを行うことになります。
- 閲覧請求する遺言書保管所を決める
※モニターで閲覧するときは、全国のどこの遺言書保管所でも可能です
※原本を閲覧するときは、原本が保管されている保管所のみとなります - 申請書を作成する
- 閲覧の請求の予約をする
- 遺言者本人が閲覧の請求をする
※本人確認ため、免許証などの提示が必要となります - 手数料を支払う
- 閲覧をする
遺言者が保管されている自筆証書遺言を返却(撤回)してもらうときの手続き
遺言者が遺言書保管所に保管している自筆証書遺言を返却(撤回)してもらうときは、次のような手続きを行うことになります。
また、保管の申請の撤回は、遺言の効力とは関係がありませんので注意が必要です。
- 撤回書を作成する
- 原本が保管されている遺言書保管所に撤回の予約をする
- 撤回し、遺言書を返却してもらう
※本人のみ撤回の申請ができる
※本人確認のため免許証などの提示が必要となります
※手数料は不要
申請時以降に住所等が変わったときの手続き
遺言者が、保管の申請時以降に氏名や住所等が変わったときは、遺言書保管所に届け出をする必要があります。
- 遺言者本人(または親権者や成年後見人等の法定代理人)が届出書を作成する
- 変更の届出の予約をする
※全国の遺言書保管所に届出ができます
※郵送でも可能です - 変更の届出をする
※添付書類が必要となります。
※手数料は不要
2019年1月13日、民法改正により自筆証書遺言が緩和されました。日本では諸外国に比べて遺言の作成率が低いといわれていますが今回の改正は、自筆証書遺言を使いやすくすることが狙いです。民法改正による自筆証書遺言の緩和についてざっくり記載[…]
遺言書保管所一覧
法務局又は 地方法務局 | 本局、支局又は出張所 |
---|---|
札幌法務局 | 本局、小樽支局、室蘭支局、岩見沢支局、苫小牧支局、滝川支局、倶知安支局、日高支局 |
函館地方法務局 | 本局、江差支局、八雲支局 |
旭川地方法務局 | 本局、留萌支局、稚内支局、紋別支局、名寄支局 |
釧路地方法務局 | 本局、帯広支局、北見支局、根室支局 |
仙台法務局 | 本局、石巻支局、塩竈支局、古川支局、気仙沼支局、大河原支局、登米支局 |
青森地方法務局 | 本局、弘前支局、八戸支局、五所川原支局、十和田支局、むつ支局 |
盛岡地方法務局 | 本局、宮古支局、水沢支局、花巻支局、二戸支局 |
秋田地方法務局 | 本局、能代支局、大館支局、本荘支局、大曲支局 |
山形地方法務局 | 本局、米沢支局、鶴岡支局、酒田支局、新庄支局、寒河江支局 |
福島地方法務局 | 本局、若松支局、郡山支局、いわき支局、白河支局、相馬支局 |
東京法務局 | 本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局 |
水戸地方法務局 | 本局、日立支局、土浦支局、龍ケ崎支局、下妻支局、常陸太田支局、鹿嶋支局 |
宇都宮地方法務局 | 本局、足利支局、栃木支局、日光支局、真岡支局、大田原支局 |
前橋地方法務局 | 本局、高崎支局、桐生支局、伊勢崎支局、太田支局、沼田支局、富岡支局、中之条支局 |
さいたま地方法務局 | 本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局 |
千葉地方法務局 | 本局、市川支局、船橋支局、館山支局、木更津支局、松戸支局、香取支局、佐倉支局、 柏支局、匝瑳支局、茂原支局 |
横浜地方法務局 | 本局、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局 |
新潟地方法務局 | 本局、長岡支局、三条支局、柏崎支局、新発田支局、新津支局、十日町支局、村上支局、 糸魚川支局、上越支局、佐渡支局、南魚沼支局 |
甲府地方法務局 | 本局、大月支局、鰍沢支局 |
長野地方法務局 | 本局、松本支局、上田支局、飯田支局、諏訪支局、伊那支局、大町支局、飯山支局、 佐久支局、木曽支局 |
静岡地方法務局 | 本局、浜松支局、沼津支局、富士支局、掛川支局、藤枝支局、袋井支局、下田支局 |
名古屋法務局 | 本局、豊橋支局、岡崎支局、一宮支局、半田支局、春日井支局、津島支局、刈谷支局、 豊田支局、西尾支局、新城支局 |
富山地方法務局 | 本局、高岡支局、魚津支局、砺波支局 |
金沢地方法務局 | 本局、七尾支局、小松支局、輪島支局 |
福井地方法務局 | 本局、敦賀支局、武生支局、小浜支局 |
岐阜地方法務局 | 本局、大垣支局、高山支局、多治見支局、中津川支局、美濃加茂支局、八幡支局 |
津地方法務局 | 本局、四日市支局、伊勢支局、松阪支局、桑名支局、伊賀支局、熊野支局 |
大阪法務局 | 本局、堺支局、岸和田支局、北大阪支局、富田林支局、東大阪支局 |
大津地方法務局 | 本局、彦根支局、長浜支局、甲賀支局 |
京都地方法務局 | 本局、福知山支局、舞鶴支局、宇治支局、宮津支局、京丹後支局、園部支局 |
神戸地方法務局 | 本局、姫路支局、尼崎支局、明石支局、西宮支局、洲本支局、伊丹支局、豊岡支局、 加古川支局、龍野支局、社支局、柏原支局 |
奈良地方法務局 | 本局、葛城支局、桜井支局、五條支局 |
和歌山地方法務局 | 本局、橋本支局、御坊支局、田辺支局、新宮支局 |
広島法務局 | 本局、呉支局、尾道支局、福山支局、三次支局、東広島支局、廿日市支局 |
鳥取地方法務局 | 本局、米子支局、倉吉支局 |
松江地方法務局 | 本局、浜田支局、出雲支局、益田支局、西郷支局 |
岡山地方法務局 | 本局、倉敷支局、津山支局、笠岡支局、高梁支局、備前支局 |
山口地方法務局 | 本局、下関支局、宇部支局、萩支局、周南支局、岩国支局 |
高松法務局 | 本局、丸亀支局、観音寺支局 |
徳島地方法務局 | 本局、阿南支局、美馬支局 |
松山地方法務局 | 本局、今治支局、宇和島支局、西条支局、大洲支局、四国中央支局 |
高知地方法務局 | 本局、安芸支局、須崎支局、四万十支局、香美支局 |
福岡法務局 | 本局、北九州支局、久留米支局、直方支局、飯塚支局、田川支局、柳川支局、朝倉支局、 八女支局、行橋支局、筑紫支局 |
佐賀地方法務局 | 本局、唐津支局、伊万里支局、武雄支局 |
長崎地方法務局 | 本局、佐世保支局、島原支局、諫早支局、五島支局、平戸支局、壱岐支局、対馬支局 |
熊本地方法務局 | 本局、八代支局、人吉支局、玉名支局、天草支局、山鹿支局、宇土支局、阿蘇大津支局 |
大分地方法務局 | 本局、中津支局、日田支局、佐伯支局、竹田支局、杵築支局、宇佐支局 |
宮崎地方法務局 | 本局、都城支局、延岡支局、日南支局 |
鹿児島地方法務局 | 本局、川内支局、鹿屋支局、奄美支局、霧島支局、知覧支局 |
那覇地方法務局 | 本局、宮古島支局、石垣支局、名護支局、沖縄支局 |
上記の内容は、ブログ記載時点のものとなります。
具体的な事案は各専門家へご相談されることをお勧め致します。
掲載の文章等の無断使用、無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士佐藤智明に帰属します。